ビレーの酒場「荒くれ者」はいつも騒がしかった。ラーンがイシェに、今日も遺跡から持ち帰った破損した石碑を見せびらかしていた。「ほら、古代文字だ!いつか解読できたら大金になるぞ!」と彼は豪語するが、イシェは眉をひそめた。「またそんな無茶なことを…」と呟きながら、ラーンの背後からテルヘルに視線を向けた。彼女はいつものようにカウンター席で酒を飲んでいた。
「あの石碑、ヴォルダン帝国の紋章に似てないか?」イシェはわざとらしく尋ねた。テルヘルはゆっくりとグラスを傾け、「興味深い指摘だ」と答えた。「あの遺跡、実はヴォルダンの監視下に置かれている可能性がある」彼女の言葉にラーンは一瞬戸惑ったが、すぐにいつもの調子に戻り、「そんなわけないだろう!」と笑い飛ばした。
しかしイシェはテルヘルの視線を感じながら、何かを察していた。彼女は最近、テルヘルがいつも持ち歩いている古い地図に注目していたのだ。そこに記されているのは、ビレー周辺の遺跡だけでなく、ヴォルダン帝国の軍事施設の位置情報だった。そして、その地図にはラーンたちが探索した遺跡にも赤い印が付けられていた。
イシェは不安を感じた。テルヘルは本当にヴォルダンへの復讐を目的としているのか?それとも、彼らを利用して何か別の目的を達成しようとしているのではないか?イシェはラーンの無邪気さに嫉妬し、テルヘルの真意を見破りたいという思いに駆られていた。
その夜、イシェは密かにテルヘルの部屋を訪れた。「あの石碑についてもっと知りたい」と彼女は嘘をついた。テルヘルは少し驚いた様子だったが、イシェの真剣な表情を見て、「わかった」と答えた。二人は静かに語り合い始めた。
しかし、イシェはテルヘルが言った言葉に一つ一つの裏側を探ろうとした。彼女の言葉の裏にある真意とは何なのか?イシェはテルヘルの言葉から、ヴォルダンの内部情報や、ビレー周辺の政治状況など、驚くべき事実を聞き出すことに成功した。
そして、イシェはついにテルヘルの真意を垣間見た気がした。それは、単なる復讐ではない、何かもっと大きな計画だったのだ。そして、その計画にはラーンと自分自身も巻き込まれていることを悟った。
イシェは深くため息をついた。彼女は自分の選択が正しいのか、それともラーンの夢を壊してしまうことになるのか、迷い続けていた。