「よし、今日はあの洞窟だ。噂には古代の王が眠る場所だってな」ラーンが拳を握りしめると、イシェは眉間に皺を寄せた。「またそんな話? 過去の遺跡で何一つ大物に出会ってないじゃないか」イシェの声にラーンの笑顔は薄れた。「今回は違うって! この洞窟には独特の魔力が漂ってるんだ。きっと何かあるはずだ!」
テルヘルは二つの視線を鋭く交差させた。「では、準備は整ったか?」彼女は腰から短剣を取り出すと、その刃を光に当てて確認した。「私は情報収集で手一杯だ。お前たちには relic の確保を任せる。ただし、安全第一だぞ」ラーンはテルヘルの言葉に耳を傾けるふりをして、イシェの肩を叩いた。「心配しないでよ、イシェ。今回は必ず大穴を見つける!」
洞窟の入り口は暗く湿り気があり、不気味な静けさに包まれていた。ラーンの足音だけが響き渡る。イシェは懐中電灯の光を ahead に向けながら慎重に進む。「何かいる…?」イシェが呟くと、ラーンは剣を抜いた。「大丈夫だ、イシェ。俺が守ってやる」二人は互いに頼り合いながら、奥へと進んでいった。
やがて、洞窟の中央には広大な部屋が現れた。壁一面には古代の文字が刻まれており、中央には巨大な石棺が置かれていた。ラーンの興奮を抑えきれず、「ついに…!」と叫びかけたその時、石棺の上から黒い影が飛び出した。それは人型の怪物で、鋭い爪を光らせて襲いかかってきた。
ラーンは剣で受け止めようとしたが、その力は想像以上に強く、吹き飛ばされてしまった。「ラーン!」イシェは悲鳴を上げた。怪物はラーンに襲いかかったが、その時テルヘルが現れた。彼女は短剣を振り回し、怪物に切りかかった。「この場を離れろ!」テルヘルの攻撃は素早く正確で、怪物は苦戦を強いられた。
イシェはラーンの元に駆け寄り、彼の手を握りしめた。「大丈夫か…?」ラーンは苦笑いしながら立ち上がった。「ああ、心配かけやがって…」そして、彼はイシェに言った。「あの石棺の中身を調べてくれ!」イシェは頷き、石棺へと近づいた。
石棺を開けると、そこには王の遺骸と共に、奇妙な金属製の箱があった。イシェは慎重に箱を手に取ると、その表面に刻まれた複雑な模様を指でなぞった。「これは…?」その時、箱から甘い香りが漂い、イシェの意識が朦朧とする。
ラーンとテルヘルはイシェの様子に気づき、駆け寄った。しかし、イシェはすでに意識を失っていた。箱から漏れ出した甘い香りは、まるで熟した果物のように甘く、食欲をそそるような香りだった。
「イシェ!」ラーンの叫びが洞窟に響き渡り、三人の運命は大きく動き出すのだった。