「よし、行こう!」ラーンが、粗末な剣を肩に担ぎ、廃墟の入り口へと歩み始めた。イシェはため息をつきながら続く。いつも通りラーンの計画性のなさに呆れていた。
「本当にここに入ってもいいんですか?」
「大丈夫だって!ほら、テルヘルさんが言ってただろ?この遺跡には古代の調律器があるって。」
テルヘルは遺跡の奥深くで何かを調べている。「調律器」とは何なのかイシェにはさっぱり分からなかった。ただ、テルヘルがその存在を熱心に語っていたことは覚えていた。ヴォルダンとの復讐を果たすために必要なものらしい。
「調律器」を探すため、彼らは崩れかけた石畳の上を慎重に歩を進めた。薄暗い通路の奥から、不気味な音が聞こえてくる。ラーンは剣を構え、イシェは背後から警戒した。
「何だ…?」ラーンの声が震える。通路の先に広がる空間には、巨大な機械が静かに鎮座していた。複雑に絡み合った金属製の部品が、まるで生きているかのように脈打っているように見えた。
「これが…調律器か…」テルヘルが呟いた。「ついに見つかった…」
ラーンの興奮を抑えきれない様子を見て、イシェは不安になった。この遺跡で何かが起きる予感がしたのだ。
テルヘルは機械の前に立ち、手を伸ばす。その時、機械から青い光が放たれ、周囲を満たした。イシェは目を細めた。その光の中に、まるで世界が調律されているかのような感覚を覚えた。
ラーンの表情が歪む。「うわっ…」
彼は叫び声を上げ、地面に倒れ込んだ。イシェが駆け寄ると、ラーンの額から血が流れていた。テルヘルは機械に手を置いたまま、冷たい声で言った。
「これで…ヴォルダンへの復讐が始まる…」