ラーンがいつものように遺跡の入り口に立ち尽くしていると、イシェが眉間に皺を寄せながら近づいてきた。
「またあの場所か？ ラーン、本当にあの遺跡は大丈夫なのか？」
「大丈夫だって！ きっと今回は何か見つかる感覚があるんだ！」
ラーンの明るい返事に、イシェはため息をついた。いつも通りのラーンの無計画さに、彼女は辟易していたが、彼の行動力にはどこか惹かれてしまう自分もいた。
「でも、あの遺跡は危険だって聞いたことがあるのよ。地元の人たちは近づかないように言ってるし…」
「そんなこと気にすんな！ イシェの慎重さはいいけど、時には飛び込んでみるのも必要なんだよ！」
ラーンはそう言って、遺跡に続く暗い通路へ入っていった。イシェはためらいながらも後を追いかけた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、時折不気味な音が響き渡る。イシェは緊張感を隠せない。
「ラーン、ここは本当に安全なのかしら…」
ラーンの後ろをついていくイシェの不安そうな声が、石畳の上で小さく反響した。
その時、ラーンの足元が崩れ、彼はバランスを崩して転げ落ちてしまった。
「うわっ！」
ラーンが立ち上がると、目の前に広がる光景に言葉を失った。そこは広々とした部屋で、中央には巨大な石碑が鎮座していた。石碑には複雑な文字が刻まれており、その周りには金貨や宝石が散乱していた。
「これは…！」
イシェは目を丸くして言った。
「大穴だ！ ラーン、本当に大穴を見つけたのかもしれない！」
ラーンの興奮を抑えきれず、石碑に近づこうとしたその時、石碑の表面から不気味な光が放たれ、部屋中に広がった。同時に、石碑から何かが動き出した。それは巨大な影のようなもので、鋭い爪と牙を備えていた。
「何だこれは…！」
ラーンは驚きと共に剣を抜く。イシェも慌てて後ろに下がった。
遺跡の奥深くで眠っていた何かが目覚め始めたのだ。