ビレーの朝焼けは、いつもより少しだけ鮮やかに染まっていた。ラーンは、イシェが持ってきた粗末なパンを頬張りながら、今日の遺跡について熱く語っていた。「今回は絶対に大穴だ!あの古代地図には間違いない!」
イシェはいつものように眉間に皺を寄せた。「また地図か?ラーン、あの地図は偽物だって何度も言っただろう。それに、あの遺跡はヴォルダンとの国境に近いんだぞ。危険すぎる」
「大丈夫だよ、イシェ。俺が守るから。それにテルヘルも一緒だぞ。あの女なら何かしらの手がかりを知っているはずだ」
ラーンはそう言って立ち上がり、剣を肩にかけた。「よし、準備はいいか?今日は大穴が見つかる日になる!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの後についていった。テルヘルは既に遺跡の入り口で待っていた。彼女は鋭い目で二人を見つめ、口を開いた。「準備はできたか?今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンの兵士が動き始めているという情報が入っている」
ラーンの顔色が少し曇る。「ヴォルダンか…。」彼はイシェにちらりと目線を向け、「大丈夫だ、俺たちは逃げ足が速いぞ」と笑った。だが、イシェは彼の強がりを理解していた。ラーンは勇敢だが、ヴォルダンとの戦いを避けたいと思っていることは明らかだった。
遺跡の入り口は薄暗く、不気味な静けさがあった。テルヘルが先頭を歩き、ラーンとイシェは後を続いた。彼らは慎重に足取りを運びながら、遺跡の奥へと進んでいった。
遺跡内部は複雑な通路で迷路のようになっている。壁には古代文字が刻まれており、謎めいた雰囲気を漂わせていた。テルヘルは地図を広げ、指で道を示しながら進む方向を指示していた。
「この先には大きな部屋があるはずだ。そこには何か重要なものがあるはずだ」とテルヘルは言った。「だが、注意が必要だ。トラップが仕掛けられている可能性もある」
ラーンは緊張した面持ちで剣を握り締めた。イシェも用心深く周囲を見回していた。彼らは静かに進み続け、ついに大きな部屋にたどり着いた。部屋の中央には、巨大な石の祭壇が置かれていた。
「これは…!」テルヘルは目を丸くして祭壇を凝視した。「伝説の宝庫だ…」
ラーンも興奮を抑えきれない様子で祭壇に近づいた。しかし、その時、床から突然炎が噴き上がり、ラーンを包み込んだ。イシェは驚いて叫んだ。
「ラーン!」
テルヘルは冷静に状況を判断し、「トラップだ!逃げろ!」と叫びながら、イシェと共に祭壇から離れた。
炎が消えた後、ラーンの姿は見えなくなっていた。イシェは絶望的な気持ちで駆け寄ったが、そこには何もなかった。
「ラーン…」
イシェの悲痛な叫びが、遺跡に響き渡った。テルヘルは冷静さを保ちながら、状況を分析した。「ヴォルダンか…彼らはこの遺跡を狙っていたのだ」とつぶやいた。
イシェは涙を流しながら、「ラーンを…! 彼を助けて…」と懇願した。
テルヘルは静かに頷き、剣を手に取った。「了解した。私はラーンを必ず助け出す。そして、ヴォルダンに復讐を果たす」
彼女は決意の光を宿した目で、イシェと共に遺跡から飛び出した。