ビレーの酒場「錆びた剣」は、いつも以上に騒がしかった。ラーンとイシェがテーブルに腰を下ろすやいなや、目を輝かせる男たちが集まってきた。
「おい、ラーン！噂は聞いたぞ。あの遺跡でまた大物か？」
「そうだな。今回は古代ヴォルダン王の肖像画らしい。価値あるものだ。」
イシェは眉をひそめた。「そんな噂を信じているのか？ただの都市伝説だろう。」
ラーンは豪快に笑い、「イシェったらいつも spoilsport だな！たまには夢を見ろよ！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観主義と、それを利用する人々への警戒心は、いつも対立していた。
その時、背の高い女性がテーブルに近づいてきた。黒曜石のような瞳と鋭い目つきは、誰よりも輝いていた。「噂は本当みたいだな。君たちは本当に運がいいね。」
それはテルヘルだった。ラーンとイシェの雇い主であり、ヴォルダンへの復讐を誓う謎の女性だ。彼女はいつも冷静沈着だが、どこか哀愁が漂っている。
「今回は報酬をアップする。あの肖像画は私のものだ。」テルヘルの目は冷たく光り、ラーンとイシェを見据えた。「失敗は許されない。」
ラーンは興奮気味に頷き、イシェは渋々承諾した。彼らの運命は、再び遺跡へと続く険しい道へと繋がっていくのだった。
だが、イシェはどこか不安を感じていた。テルヘルの真意は？そして、あの肖像画にはどんな秘密が隠されているのか？
ビレーの酒場「錆びた剣」の騒音は、まるで遠い昔に聞こえた。イシェは、ラーンの背中に続く影のように、静かに歩み始めた。