ビレーの朝はいつも早かった。ラーンが目を覚ますと、イシェがすでに準備を終えていた。「今日はあの洞窟だな」イシェが地図を広げると、ラーンの顔に自然な笑みがこぼれた。「よし、行こうぜ！」
二人は町の入り口でテルヘルと合流した。彼女はいつものように黒づくめの装束を身にまとい、鋭い眼光で周囲を警戒していた。「今日は慎重に進もう」テルヘルの言葉はいつもより重く響いた。ラーンが気のない様子で「分かってるよ」と答えた時、イシェは彼の背中に手を置いた。「何かあったのか？」イシェの問いかけに、ラーンは小さくうなずいた。
洞窟の入り口には奇妙な紋章が刻まれており、テルヘルは慎重にその意味を解き明かした。「これはヴォルダン王国の紋章だ。ここには危険な罠が仕掛けられている可能性がある」イシェは緊張した表情でラーンを見た。いつも無鉄砲な彼の顔にも少しばかりの不安の色が見えた。「大丈夫だって」ラーンはそう言って、剣を抜いた。
洞窟の中は暗くじめじめとしていた。足元には滑りやすい石が散らばり、天井からは滴る水音が不気味に響いていた。彼らは慎重に進んでいくにつれて、空気中に漂う奇妙な臭いに気づいた。イシェは鼻を鳴らしながら「これは...」と呟き、ラーンは本能的に剣を構えた。
その時、洞窟の奥から低い唸り声が聞こえてきた。それは獣のような声ではなく、何か巨大な機械が動き出すような音だった。「何かが近づいてる！」ラーンの叫びと共に、洞窟の奥から光が差し込んできた。それは巨大なロボットのようなもので、その目は赤く燃える炎で満たされていた。
「逃げろ！」テルヘルが叫んだが、ラーンは立ち向かおうとした。イシェは彼の腕を引き寄せ、「無理だ！あの機械には勝てない！」ラーンの顔には動揺の色が見えたが、彼はイシェの言葉を無視してロボットに突進した。
イシェは深くため息をつき、テルヘルの方を見た。「彼を止めないと...」彼女の目には決意が宿っていた。二人は力を合わせ、ラーンをロボットから引き離そうとしたその時、ロボットの腕がラーンめがけて振り下ろされた。