ラーンの大音量の笑い声が、ビレーの朝霧を切り裂くように響いた。イシェは眉間にしわを寄せ、彼を見つめた。「また遺跡で宝探しだなんて、いつまでそんなことを続けるつもりだ？ いつになったら現実を見るんだ？」
ラーンは肩をすくめた。「お前が言うほど大した話じゃないぞ。いつか必ず大穴を掘り当ててやる。そうすればお前も楽になるだろう」
「楽？」イシェは嘲笑した。「大穴なんて存在するわけない。それに、仮に存在したとしても、それは誰かのために働くための道具に過ぎない。自分たちの生活のためには何も変わらない」
ラーンの顔色が変わった。「お前はいつもそんなことばかり言うな！ 俺たちはまだ若いんだ。夢を諦めるのは早すぎるぞ！」
イシェはため息をつき、視線をテルヘルに向けた。彼女は冷静な表情で、二人のやり取りを見つめていた。
「今日の遺跡は、以前から調査していた場所だ。地図によると、そこには古代の文明が残した技術に関する記録があるらしい。もしそれが本当なら、我々の生活を大きく変える可能性がある」
ラーンの顔色が明るくなった。「そうか！ お前の言う通りだ！ これは大穴への道筋かもしれない！」
イシェはテルヘルの言葉に少し希望を感じたが、同時に不安も覚えた。テルヘルが遺跡調査に興味を示すのは、単なる好奇心からではないことは明らかだった。彼女の真の目的は何なのか？ イシェは、テルヘルの言葉を誤読しているのではないかという恐怖を覚えた。
「準備はいいか？」テルヘルが立ち上がり、二人に問いかけた。「では、出発しよう」