ビレーの賑やかな市場を背に、ラーンはイシェとテルヘルに向かって「よし、今日はあの遺跡だ!」と豪快に笑った。イシェは眉間にしわを寄せて「またあの話か? ラーン、あの遺跡は危険だって何度も言っただろう」とため息をついた。
「大丈夫、大丈夫。今回は俺が念入りに調査したんだ。地図も手に入れたし、罠も事前に解明してある。必ず大穴が見つかる!」とラーンは自信満々に胸を張った。イシェは彼の熱意に押されながらも、どこか不安を感じていた。
テルヘルは冷静に「準備は万端ですか? 特に今回はヴォルダンからの情報提供があるようです」と尋ねた。ラーンの無計画さを補うべく、彼女は情報収集にも力を注いでいた。
遺跡の入り口には、かつての文明の残骸が朽ち果てていた。ラーンは目を輝かせながら「さあ、夢への第一歩だ!」と駆け出すと、イシェは仕方なく彼の後を追った。テルヘルは静かに二人を見つめ、何かを察知したように眉をひそめた。
遺跡内部は薄暗く、不気味な静寂に包まれていた。ラーンは興奮気味に壁に刻まれた古代文字を指さしながら「すごい! これには何書いてあるんだ? イシェ、わかるか?」と問いかけた。イシェは慎重に文字を解読すると「警告だ…ここは非常に危険で、触れてはいけないものがある…」と呟いた。
その時、ラーンの足元にある石畳が突然沈み込み、床から鋭い棘が飛び出した。ラーンは慌てて後ずさりするも、すでに遅く、左足を深く切り付けられた。
「ぐっ…!」ラーンは痛みに声を上げ、地面に倒れ込んだ。イシェは駆け寄り、彼の傷口を急いで止血した。「大丈夫か、ラーン!?」と焦る声で問いかけた。
テルヘルは冷静に周囲を見回し、「これは罠だ。誰かが意図的に作動させた」と呟いた。イシェは「誰だ? なぜこんなことを…?」と混乱し始めたが、テルヘルは「今は考えない。まずはラーンの治療を優先しよう。」と切り捨てた。
ラーンは意識を朦朧とさせながら「あの…地図…間違っていた…」と呟き、目を閉じた。イシェはラーンの言葉を聞き、激しい怒りと恐怖に襲われた。そして、テルヘルの鋭い視線を感じた時、彼女は自分が利用されていることに気づいた。この遺跡、そしてラーンの怪我。全ては計画された誤作動だったのだ。