ラーンの鼻息が荒く、石の粉塵が舞い上がった。
「おい、イシェ、あと少しだぞ!」
彼の言葉は、狭い洞窟内にこだました。イシェは眉間に皺を寄せていた。
「落ち着きなさい、ラーン。まだ崩落する可能性がある」
彼女の視線は、薄暗い奥へと向けられていた。そこには、かすかに光る何かが—遺跡の遺物か、それとも罠なのか—見えた。ラーンの興奮に比べ、イシェは慎重だった。彼女はいつもそうだった。
「よし、わかったわかった。でも、早く見せてくれよ、イシェ」
ラーンは不機嫌そうに言った。彼の視線は、イシェではなく、奥の光に向けられていた。そこに、大穴を掘り当てる夢、そしてその先の自由な生活を想像していたのだろう。
その時だった。
背後から冷たい声が響いた。
「見つけたものは、私達のものだ」
ラーンとイシェは振り返った。洞窟の入り口には、テルヘルが立っていた。彼女の顔色は険しく、鋭い眼光で二人を見下ろす。
ラーンの表情は一瞬で曇り、イシェは小さく息を呑んだ。
「テルヘル…」
「いいでしょう、イシェ。私が言いたいのは、この遺跡は私達が最初に発見したということだ」
テルヘルの言葉は冷たかった。彼女の目は、奥の光に向けられていた。そこには、彼女が復讐を果たすための鍵が眠っている。