ビレーの酒場はいつもより騒がしかった。ラーンとイシェはいつものように、テーブルに広げた地図を広げ遺跡の場所を確認していた。
「今日の目標はあの未調査区域だ。テルヘルが言うには、そこにはヴォルダン軍が持ち去った古代の遺物があるらしい」
ラーンの言葉に、イシェは眉をひそめた。「またか。テルヘルの言うことは本当なのか？」
「ああ、本当さ。彼女はヴォルダンへの復讐に燃えているんだ。そのために必要な情報を手に入れるためなら、どんな手段も使うだろう」
ラーンはそう言うと、酒をぐいっと傾け、目を輝かせた。「それに、あの遺跡には大穴があるらしいぞ！俺たちの人生が変わるようなものが見つかるかもしれない！」
イシェはため息をつきながらも、地図に目を落とす。未調査区域は危険な場所として知られており、多くの冒険者が命を落としたという噂があった。しかし、ラーンの興奮する様子を見て、自分も少しだけ期待を感じていた。
「よし、準備はいいか？テルヘルが待っているぞ」
ラーンは立ち上がり、イシェに手を差し出した。イシェはためらいながらも手を握り、一緒に酒場を後にした。
街の喧騒を抜け、遺跡へと続く山道に入ると、空気が重くなった。イシェは背筋に冷たいものが走る感覚を感じた。未調査区域への道は険しく、危険が潜んでいることを肌で感じさせる場所だった。
テルヘルは既に遺跡の入り口前で待っていた。黒曜石のように黒い瞳は冷たく、その表情には何ものも読み取ることができなかった。
「準備はいいか？」
テルヘルの声が響き渡る。イシェはラーンに視線を向けると、彼はいつものように無邪気な笑顔を見せていた。
「さあ、大穴を探しにいくぞ！」
イシェは深く息を吸い、遺跡へと続く道を踏み出した。未知なる世界への入り口には、誘惑と危険が渦巻いていた。