「おいラーン、待てよ!」イシェが慌ててラーンの腕を掴んだ。「あの記号…見たことがあるぞ。以前、古い文献で…」
ラーンはイシェの言葉を無視して遺跡の奥へと進んでいく。彼の目は輝いており、興奮を抑えきれない様子だった。「大穴だ!今回は間違いない!」
イシェはため息をついた。「そんな安易な考えで遺跡に飛び込むのは危険だ。あの記号は警告かもしれないぞ」
ラーンの背中はすでに薄暗がりの中に消えていた。「大丈夫だ、イシェ。俺が守るから。それに、テルヘルが言っていたように、今回は大物が見つかるはずだ。これで我々の生活も変わる…」
テルヘルは彼らの前に立ちはだかり、鋭い目で彼らを睨んでいた。「待て。まだだ。」彼女の口調は冷たかった。「あの記号の意味を解明する必要がある。それが我々にとって安全な道筋となるのだ」
ラーンは不機嫌そうに剣を構えた。「何をしているんだ?俺たちは宝を探しに来たんだぞ!」
テルヘルは静かに彼らを見下ろした。「宝?君たちが望むのは単なる財宝か?」彼女の視線は遠くを見つめていた。「私は復讐のため、この遺跡に来た。そして、そのために必要なものこそが、あの記号の意味を解き明かすことだ」
イシェはラーンの腕を掴んだ。「ラーン、落ち着いて。テルヘルには理由がある。あの記号はただの警告ではないかもしれない」
ラーンの表情は少しだけ緩んだ。「わかった…わかった。だが、もし本当に大物が見つかったら、俺たちが最初にそれを手に入れる権利があるはずだぞ!」
テルヘルは小さく頷いた。「約束しよう。そして、共にこの遺跡の謎を解き明かすのだ」
イシェはラーンの肩を叩き、彼に何かを伝えるように言った。「ラーン、忘れているな?お前と俺が誓ったこと…あの日、ビレーを出て行く時…」
ラーンは一瞬だけ目を閉じ、その後に力強く頷いた。そして三人は再び遺跡の奥へと進み始めた。彼らの足取りは、希望と不安、そして過去の誓いによって支えられていた。