ラーンが巨大な石の扉をこじ開けるように押し広げると、埃っぽい空気が充満した遺跡内部へと続く階段が現れた。イシェは懐中電灯の光で周囲を照らしながら、足元に注意深く足を踏み入れていった。「ここは一体何処だ?こんな奥まった場所には、本当に何かあるんだろうか…」
「ほら、イシェ!お前がいつも言うように、大穴にはリスクと引き換えに、必ず大きな報酬があるって言うだろ!」ラーンはワクワクした様子で階段を駆け上がり、石畳の上を軽やかに跳びながら進む。イシェはため息をつきながらも、彼についていくしかない。テルヘルは静かに後ろから二人を見つめ、薄暗い通路の奥に目を凝らしていた。
「ここはかつて、ヴォルダンが支配する前に栄えた王国の一部の遺跡だ。言い伝えでは、この王国の王は、強力な魔法を使う者であり、その力を使って国を繁栄させたという…」テルヘルが淡々と説明すると、ラーンの顔色が少し曇った。ヴォルダンといえば、彼の故郷を破壊し、家族を奪った憎き敵だった。
「そして、その王が最後に作り上げたのが、この遺跡だと噂されている」テルヘルは続けた。「王の墓と、彼が秘めた魔法の書があるというのだ…」
イシェは少し不安そうに言った。「でも、そんな貴重な物があるとしたら、ヴォルダンも既に探しているんじゃないか?」
「そうかもしれない。だが、この遺跡は複雑な構造をしており、ヴォルダンですら全てを解明出来なかったようだ」テルヘルは冷たい目で言った。「だからこそ、我々がここに来たのだ…」
彼らは長い通路を進み、やがて広大な部屋にたどり着いた。壁一面には古代の文字が刻まれており、中央には巨大な祭壇が置かれている。祭壇の上には、輝く金色の箱が鎮座していた。
「これが…王の墓か…」ラーンは息を呑んで言った。イシェも目を丸くして箱を見つめていた。テルヘルは静かに近づき、箱の上に手を伸ばそうとしたその時、床から突然光が放たれ、部屋中に響き渡る轟音とともに石版が崩れ落ちた。
「これは…!」ラーンは驚愕の声を上げた。崩れた石版の下には、巨大な影がうねり始めていた。それは、まるで生き物のように蠢く漆黒の闇だった。
「何だ…!?」イシェは恐怖で声を失った。テルヘルは冷静さを保ちながら剣を抜き、ラーンとイシェに言った。「あの影を倒さなければ、この遺跡から出ることはできない。お前たちの力を貸してくれ…!」