ビレーの酒場「みずがめ座」は、いつもよりも騒がしかった。ラーンとイシェがカウンター席に着くと、テルヘルがすでに酒を傾けていた。彼女の顔色は険しく、酒の匂いも強かった。
「何かあったのか?」ラーンの問いかけに、テルヘルは深呼吸し、テーブルの上にあった羊皮紙を広げた。「ヴォルダンの動きだ。新たな遺跡調査隊を編成したらしい。目的は不明だが、ビレーに近い場所での活動だと情報が入った。」
イシェは眉をひそめた。「ヴォルダンがここへ?あの大国に何の用がある?」
「遺跡だ。」テルヘルは力なく言った。「ヴォルダンは何かを探している。そしてその手がかりが、このエンノル連合にあると彼らは信じているようだ。」
ラーンの顔色が変わった。「それって…俺たちの仕事に影響があるってことか?」
「そうかもしれない。」テルヘルの目は鋭く光った。「ヴォルダンが先に遺跡を制圧すれば、我々には何も残らない。そして、彼らが手に入れたものは…」彼女は言葉を濁した。「話にならない。我々は動き出さなければならない。次の遺跡調査に出る前に、ヴォルダンの動きを阻止する必要がある。」
ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。「わかった!俺たちはビレーの者だ。ヴォルダンが俺たちの土地に足を踏み入れるのを許すわけにはいかない!」
イシェは静かに頷き、テルヘルは少しだけ優しい笑顔を見せた。「そうだな。俺たちも、お前たちと一緒に戦う。」