「よし、今日はあの崩れかけた塔だな！」ラーンの声はいつも以上に高かった。イシェは眉間に皺を寄せながら、地図を広げた。「あの塔は危険だって聞いたことがあるわ。落石が多いし、中には毒ガスが充満しているかもしれないって」
「そんなこと気にすんな！大丈夫だぞ、イシェ。俺が守るから。」ラーンは自信たっぷりに笑った。イシェはため息をついた。ラーンの楽観主義にはいつも振り回される。テルヘルは冷静に言った。「危険を甘く見ない方が良い。準備をしっかりして行こう」
遺跡の入り口では、ラーンがいつも通り無造作に剣を抜いていた。イシェは念入りにロープとトーチを準備する。テルヘルは地図を広げ、慎重に周辺を視察した。彼女はヴォルダンとの戦いを考えていた。この遺跡から何か手がかりが見つかるかもしれない。
塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。崩れた石畳の上を進んでいくと、壁には奇妙な文字が刻まれていた。「これって…古代語？」イシェは興味深そうに近づいた。ラーンは飽きっぽく「どうでもいいよ、早く財宝を見つけろよ！」と言い放った。
テルヘルは壁の文字を注意深く観察した。彼女は古代語に精通しており、この文字がヴォルダンと深い関わりがあることを知っていた。もしかしたら、この遺跡にはヴォルダンの秘密が隠されているのかもしれない。
彼らは塔の奥深くへと進んでいった。道中、毒ガスが発生する場所もあり、イシェの機転で難を逃れることができた。ラーンの無茶な行動に何度もイシェは呆れつつも、彼を助けながら前に進んだ。テルヘルは彼らの様子を静かに見つめていた。
塔の一番奥には、大きな石棺が置かれていた。ラーンは興奮して石棺に近づき、蓋を開けようとした。「待て！」イシェの声が響き渡った。石棺の上には、警告の文字が刻まれていた。
「これは…呪いの石棺だ」イシェは顔色が変わった。「触れたら大変なことになるぞ！」ラーンは渋々引き下がった。テルヘルは石棺に近づき、古代語で書かれた警告文を解読した。
「この石棺には、ヴォルダンが封印した強力な魔物が眠っているらしい…」彼女は深刻な表情で言った。「もしこれを解き放つと、とんでもないことになるだろう」ラーンの顔色が変わった。イシェは彼の手を掴んだ。「もう引き返そうよ、ラーン」
テルヘルは石棺をじっと見つめた。ヴォルダンとの戦いに必要な情報がここにあるかもしれない。だが、リスクはあまりにも大きい。彼女は難しい決断を迫られていた。
「よし…」テルヘルは深呼吸し、言った。「今回は引き返すことにしよう。だが、この遺跡の調査は継続する必要がある」ラーンの顔色が戻り、イシェも安堵した。
彼らは遺跡を後にしたが、その日から彼らの運命は大きく動き出すことになる。