ビレーの酒場「錆びた剣」はいつも以上に喧騒だった。ラーンとイシェが席につくと、テーブルの上にはすでに酒樽が置かれ、テルヘルは不機嫌な顔で二人を待っていた。
「遅すぎるぞ。噂によると今日は大物が出るらしいんだ」
テルヘルの言葉にラーンは顔を輝かせた。
「大物か！ついに俺たちの運が開けるってことか！」
イシェは眉間に皺を寄せながら、テルヘルに尋ねた。
「大物とは何のことだ？」
テルヘルは冷たい目でイシェを見下ろした。
「遺跡の噂話で耳を傾けなさい。最近、ビレー周辺で『蒼い炎』と呼ばれる遺物が発掘されているらしい。ヴォルダンではその価値が非常に高く、すでに数々の探検隊がこぞって探しているという」
イシェは顔を曇らせた。蒼い炎の噂は確かに聞いたことがある。しかし、ヴォルダンに関連する遺跡は危険な目に遭う可能性が高い。
「だが、ヴォルダンと関わるのは避けたいだろう？あの国は…」
「黙れ！俺たちの目的を忘れたのか？」テルヘルは剣をテーブルに叩きつけ、鋭い視線でラーンを見据えた。「蒼い炎を入手できれば、ヴォルダンの貴族さえもひざまずく力になる。そして、俺たちは復讐を果たせる」
ラーンの目は興奮で輝いていた。蒼い炎の噂はビレー中を駆け巡り、すでに多くの冒険者たちが遺跡に挑んでいるという評判を聞いたことがあった。
「よし！蒼い炎だ！俺たちなら必ず手に入れるぞ！」
ラーンが興奮気味に叫ぶと、イシェはため息をついた。彼はいつも通り、ラーンの熱意に巻き込まれてしまうのだ。しかし、今回は何か様子が違う。テルヘルの表情には、今まで感じたことのない狂気のようなものが宿っていたように見えた。
イシェは不安な気持ちを抱きながら、蒼い炎を求めて遺跡へと足を踏み入れた。