「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェの顔を見据えた。二人は互いに頷き合った。廃墟と化した石造りの建物に、薄暗い光が差し込み、埃が舞う中、彼らは緊張感漂う空気を共有していた。
「よし、入ろう」テルヘルの声が響く。ラーンは剣を抜き、イシェは小さな懐中電灯のスイッチを入れた。遺跡の入り口から一歩踏み入れると、冷たく湿った風が彼らを包み込んだ。
「ここは…?」イシェが周囲を見回し、不安げに呟いた。「以前にも来たことがあったような…」
「記憶を消す術を使っているのかもしれない」テルヘルは冷静に答えた。「この遺跡には何か秘密があるはずだ。それを探すのが私たちの目的だ」
彼らは慎重に進み、崩れかけた石畳の上を進んでいった。壁には奇妙な模様が刻まれており、何とも言えない不気味さを醸し出していた。突然、ラーンの足元から、石版が転がり落ちた。「なんだこれ?」ラーンは石版を拾い上げると、その表面に複雑な文字が刻まれていることに気づいた。
「これは…!」イシェの顔が蒼白になった。「古代ヴォルダン王国の紋章だ…」
テルヘルは眉間にしわを寄せた。「まさか…」彼女はゆっくりと口を開き、「この遺跡はヴォルダン王国のものであり、その存在を隠蔽するために記憶を改ざんしている可能性がある」
その時、背後から不気味な音が聞こえた。振り返ると、影のようなものたちが彼らに向かって襲いかかってきた。ラーンは剣を振りかざし、イシェは素早く動き回りながら攻撃をかわした。テルヘルは冷静に戦況を見極め、魔法の力を発動して影たちを撃退した。
激しい戦いの後、三人は一息つき、傷ついた体を休めた。「この遺跡には何か大きな秘密が隠されている…。」イシェは震える声で言った。
「そうだ」テルヘルは静かに頷いた。「そして、その秘密はヴォルダン王国と深く関わっている…」彼女は目を輝かせ、「この遺跡から真実を明らかにし、ヴォルダンに復讐を果たすために…」
ラーンは何も言わず、ただ剣を握り締めた。イシェはテルヘルの言葉に驚きを感じながらも、どこかで運命的なものを感じていた。彼らは互いに異なる目的を抱えながらも、この遺跡の謎と対峙することになるのだ。