日差しが容赦なく照りつけるビレーの広場に、ラーンがイシェを引っ張ってきた。「おい、イシェ!今日はテルヘルが珍しい依頼を持ってきてるってんだぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、「また大口を叩いて、結局安っぽい trinket(小物の意)だったなんてことになったら困るわ」と呟いた。しかしラーンの熱気に押されて、結局広場の中央に設けられたテルヘルのテントへ向かった。
テント内ではテルヘルが、テーブルに広げた古い羊皮紙を指でなぞっていた。その目は鋭く、まるで獲物を狙う獣のようだった。「今日は特別な依頼だ。ヴォルダン領に眠ると言われる遺跡、その中に隠された古代の書物を入手したい」
ラーンの目が輝き始めた。「古代の書物か!もしかしたら大穴が見つかるかもしれないぞ!」
テルヘルは少し微笑んだが、目は冷たかった。「その書物はヴォルダンの支配者一族に伝わるものだ。そこに記されたものは、ヴォルダンを滅ぼす鍵となる…かもしれない。だが同時に、危険な秘密も秘めている可能性がある」
イシェは不安そうに言った。「そんな危険な物、なぜ我々に?」
テルヘルはゆっくりと口を開いた。「私はかつてヴォルダンに全てを奪われた。家族、故郷、そして大切な人々も…」彼女の目は燃えるような炎で満たされていた。「この書物を手に入れることで、私は復讐を果たすことができる。そして、世界に真実をもたらすのだ」
イシェはラーンの顔を見つめた。ラーンの目は、冒険と欲望で輝いていた。だがイシェの心には、何かが引っかかるものがあった。まるで、テルヘルの言葉の裏にある何か、見過ごせないものを感じたのだ。
「よし、わかった!我々はやるぞ!」ラーンが力強く言った。イシェは深くため息をつきながら、二人の後ろをついていった。
テルヘルは満足げに微笑んだ。彼女の唇からはかすかな言葉が漏れた。「これで、計画通りだ…」
その夜、ビレーの街灯の下で、イシェは一枚の羊皮紙を見つめていた。それはテルヘルからもらった地図で、遺跡への道筋と、書物の隠し場所を示していた。しかし、イシェの目に止まったのは、地図の端の方に小さく記された文字だった。「訴状」。
イシェの胸に不吉な予感が広がっていく。