ラーンの粗雑な剣の扱いにイシェが眉をひそめた。「もう少し丁寧に扱わないと、あの遺跡の宝物は傷ついてしまうぞ」。「ああ、わかったわかった。気にしすぎだなお前」。ラーンはそう言って、埃っぽい石を叩き落とした。彼らの前に広がるのは、古代文明の遺跡の一部と思われる、複雑な模様が刻まれた石室だった。
テルヘルは鋭い目で部屋を見渡しながら言った。「ここには何かあるはずだ。この遺跡の記録によると、ここはかつて『約束の場所』と呼ばれ、重要な儀式が行われていたらしい」。「約束の場所か…」イシェは呟いた。彼女は、最近ラーンが口にするようになった「大穴」という言葉と重ねて考えていた。
突然、石室の奥から不気味な音が響き渡った。ラーンは剣を構え、イシェは後ろに隠れた。「何だあの音?」ラーンの声が震える。テルヘルは冷静さを保ち、周囲を探りながら言った。「罠かもしれない。注意しろ」。彼らはゆっくりと石室の奥へと進んでいった。
すると、そこには巨大な石棺が置かれていた。石棺の上には、奇妙な模様が刻まれており、まるで生きているかのような不気味な光を放っていた。ラーンの視線は石棺に釘付けになった。「これは…!」彼は興奮した様子で近づき、石棺の蓋に触れようとした。
「待て!」イシェが叫んだ。だが、ラーンはすでに蓋を開けていた。その瞬間、石室全体が震え始めた。石棺から黒い煙が立ち上り、不気味な声が響き渡った。「この力は…」テルヘルは驚愕した表情を見せた。
ラーンの顔色は青ざめた。「これは…!」彼は自分の手を震わせながら言った。「許婚の墓だ…」