ラーンが遺跡の崩れかけた壁を蹴り飛ばすようにして進もうとした時、イシェの制止の声が響いた。「待て！あの石畳、見てみろ！」
イシェは指で埃をかき落とすと、そこに刻まれた複雑な模様を真剣な顔で見つめていた。ラーンもその模様に目を凝らした。幾何学的な図形と、まるで文字のような記号が組み合わさっている。どこかで見たことがあるような…
「これって…」
ラーンの心の中で、遠い過去の記憶がかすかに蘇った。幼い頃、祖父が遺跡から持ち帰った石板に刻まれた模様。祖父は目を輝かせて、この模様が古代文明の秘密を解き明かす鍵になると熱く語っていた。しかし、祖父はその後謎の病気で亡くなり、石板もどこかに消えてしまった。
「どうした？」イシェの問いかけにラーンは我に返った。「いや、なんでもない。」
だが、あの石畳の模様が、祖父の石板と同一のものかどうか確信することができない不安が心をよぎる。もし、これが古代文明の秘密につながるものだとしたら…
「この遺跡には何かあるぞ！」
ラーンの興奮を抑えきれない様子に、イシェはため息をついた。「いつもそんなこと言う…」
その時、テルヘルが影から姿を現した。「発見か？早速進もう。」彼女は石畳をじっと見つめ、「この模様はヴォルダンにも繋がるものだ。我々にとって重要な手がかりになるだろう。」と呟いた。
ラーンの心は複雑な感情に渦巻いていた。古代文明の秘密、祖父の記憶、そしてテルヘルの復讐。全てが交錯する中で、彼ら三人は遺跡の深くに足を踏み入れていく。