ビレーの朝はいつも早かった。薄暗い空の下、ラーンがイシェを起こすために粗末な扉を叩いた。
「起きろよ、イシェ。今日はテルヘルと合流の日だぞ！」
イシェは眠そうに目をこすりながらベッドから立ち上がった。「またあの遺跡か。大穴が見つかるわけがないのに…」
ラーンの顔にはいつもの自信が満ち溢れていた。「今回は違う！何か感じるんだ、今回は必ず何か見つかるって！」
二人は小さな朝食を済ませると、テルヘルとの待ち合わせ場所である酒場へと向かった。テルヘルはすでにテーブル席に座っており、薄暗い店内に鋭い視線で周囲を見回していた。
「遅っな、二人は。」
彼女の口調は冷たかったが、ラーンは気にせず笑顔で椅子に座った。
「今日はあの遺跡だぞ、テルヘル。地図によると、まだ誰も足を踏み入れたことのない場所らしい。」
イシェが地図を広げて示す。複雑に絡み合う記号が記された地図には、未探索の遺跡を示す赤い印があった。
「この記号…見たことがある気がする…」イシェは眉をひそめた。「どこかで…」
「どうした？」ラーンが尋ねた。
イシェは言葉を濁し、地図を閉じた。「気にしない。行こう。」
テルヘルは立ち上がり、剣を腰に装着した。「では、出発だ。」
三人は遺跡へ向かう途中、荒廃した街並みを通り過ぎた。かつて栄えていたであろう建物は今や崩れ落ち、風に草木が生い茂っている。
「ここもヴォルダンの軍勢の犠牲になったのか…」イシェが呟いた。
ラーンは何も言わずに黙り込んだ。
遺跡への入り口は崩れかけており、中からは不気味な影が差し出されていた。テルヘルが先頭に立ち、剣を構えたまま中へ入った。
「気をつけろ。」
イシェはラーンの手を取り、後ろから続いた。遺跡内部は湿気と埃で充満し、薄暗い光だけが射していた。壁には不思議な記号が刻まれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。
「これは…」イシェは壁に刻まれた記号を見て声を失った。「ヴォルダンが…？」
ラーンはイシェの肩に触れた。「落ち着いて、イシェ。」
テルヘルが先へ進んでいくと、遺跡の中心部へと続く階段があった。階段を上り終えると、広々とした部屋にたどり着いた。部屋の中央には、巨大な石碑が鎮座していた。石碑には複雑な記号が刻まれており、その中心には輝く赤い宝石が埋め込まれていた。
「大穴…」ラーンの瞳が輝き始めた。
イシェは石碑に刻まれた記号をじっと見つめていた。「これは…ヴォルダンが探していたものと同じだ！」
テルヘルは石碑の周りを見回し、何かを探しているようだった。そしてついに、石碑の側面に隠された小さな扉を発見した。
「ここだ。」
扉を開けると、中には暗い通路が広がっていた。テルヘルの顔には興奮と狂気が浮かんでいた。
「この通路の先には、ヴォルダンを滅ぼす力がある…！」
ラーンとイシェは互いに顔を合わせた。彼らの心には不安と期待が入り混じっていた。