「おい、イシェ、今日はいい感じの予感がするんだ!」 ラーンが胸を張って宣言した。目の前には、深い緑に覆われた森と、その奥にそびえ立つ巨大な遺跡の入り口があった。
「またそんなこと言ってるよ。ラーン。計画性も無く、気分次第で行動するから、いつも危険な目に遭うんだよ。」 イシェは眉間にしわを寄せながら言った。だが、ラーンの目をじっと見つめると、ほんの少しだけ口角が上がった。「よし、わかった。今回はあなたの言う通りにしよう。」
「やったぜ!イシェもやる気か?じゃあ、テルヘルはどうするんだ?」 ラーンは振り返り、テルヘルに問いかけた。
テルヘルは静かに遺跡の入り口を眺めていた。「あの遺跡には、ヴォルダンが恐れる何かがあるはずだ。そして、その鍵はきっとこの場所に眠っている。」 彼女は冷酷な表情で言った。「私はそれを手に入れるため、あなたたちと手を組んだ。準備はいいか?」
ラーンとイシェは互いに頷き合った。彼らはテルヘルの目的を知らないまま、遺跡へと足を踏み入れた。遺跡内部は薄暗く、湿った空気と埃の匂いが充満していた。壁には謎の文字が刻まれており、床には崩れ落ちた石像が転がっていた。
「この遺跡は、かつて強力な魔法使いが住んでいた場所らしい。」 イシェは壁に刻まれた文字を指さし、呟いた。「古い書物にその記述があったと記憶している。」
「魔法使いか…。」 ラーンは興味津々で言った。
その時、突然地面が激しく揺れた。天井から石が崩れ落ち、ラーンとイシェは慌てて身をかわした。「何だこれは!」
「敵か!?準備しろ!」 ラーンは剣を抜くと、イシェと共に警戒を強めた。
その時、テルヘルが静かに言った。「これは自然現象ではない。何かが遺跡を目覚めさせようとしている。」 彼女の目は鋭く光り、どこか遠くを見つめているようだった。「この遺跡には、ヴォルダンに関係する秘密が隠されているはずだ。そして、その秘密は今、動き出そうとしている…」
ラーンの胸に冷たい風が吹き抜けた。彼らはこの遺跡で、何かに巻き込まれていることに気づき始めた。そして、その何かは、彼らを遥か彼方へと導く「託宣」のように思えた。