ラーンが遺跡の入り口で、興奮気味に剣を構えた。
「よし、イシェ!今回は絶対に大穴だ!」
イシェはため息をつきながら、背負った荷物を整理した。
「またそんなこと言ってる… ラーン、あの遺跡は調査済みだって。大したものは残っていないはずよ。」
「いや、俺の勘が言うんだ! きっと今回は違う!ほら、テルヘルも期待してんじゃん?」
ラーンはテルヘルの方を見たが、彼女はいつものように無表情だった。
「準備はいいか? 探索は我々が行う。お前たちは遺物の確保と警備だ。」
テルヘルはそう言い放ち、遺跡へと続く階段を歩き始めた。ラーンの興奮にイシェは呆れながらも、彼について行くしかなかった。
遺跡内部は湿気がこもり、薄暗い空気に包まれていた。ラーンは懐中電灯の光を壁に当てながら、足早に進んでいく。イシェは後ろから彼を見つめ、細心の注意を払いながら足元を確認した。
「本当に何もないんじゃないのかしら…」
イシェが呟くと、ラーンは振り返り、ニヤリと笑った。
「まだ諦めるなよ! まだ奥へ進んでいないんだぞ!」
イシェはラーンの言葉に苦笑するしかなかった。しかし、彼と共に遺跡を探索していると、時折、何かを感じ取ることがあった。まるで、この遺跡が秘めている何かを隠しているかのように。
彼らは遺跡の奥深くへと進むにつれ、壁画や彫刻が増えてきた。そして、ついに、大きな部屋に出た。中央には巨大な石碑がそびえ立ち、その周囲には奇妙な模様が刻まれていた。
「これは…」
テルヘルが呟き、石碑に近づいていった。イシェもラーンも興味津々で彼女の後を続けた。
「ここには何か書かれているようだ… ヴォルダンに関するものかもしれない。」
テルヘルは石碑の文字を解読しようと試みたが、その言語は彼らには理解できなかった。
「どうだ? 大穴が見つかったぞ!」
ラーンの興奮の声が響き渡った。イシェは彼が何かを見つけたことに驚き、慌てて彼の指さす方向を見た。しかし、そこには何もなかった。
「何のことだ? 何を騒いでいるんだ?」
イシェが問いかけると、ラーンは少し戸惑った様子で言った。
「え、でも…さっきまでここにあったはずなんだよ…」
「何が?」
イシェとテルヘルが同時に尋ねた。
ラーンの指さす方向には確かに何もなかった。空虚な壁がそこに存在しているだけだった。
「まさか…幻覚?」
イシェは呟いた。しかし、ラーンの顔色からして、単なる幻覚ではないようだった。
その時、テルヘルが石碑の文字をもう一度じっくりと見始めた。そして、彼女は目を輝かせたように言った。
「わかった! この石碑には、ヴォルダンに関する秘密が隠されている!」
イシェは驚愕した。ラーンも興奮気味に尋ねた。
「何てことが書いてあるんだ?」
テルヘルは少しだけ沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「この石碑には、ヴォルダンがかつてこの地に存在した巨大な遺跡を破壊し、その力を利用しようと計画していたことが書かれている…そして、その計画を阻止するために、ある人物が立ち上がったという…」