「よし、今日はあの崩れかけの塔だな！」
ラーンの声はいつも通りの熱気で、イシェを少しだけイラッとさせた。
「また遺跡探しの話か…本当に大穴が見つかると思っているのか？」
イシェがそう言うと、ラーンは笑い飛ばした。
「いや、見つかるに決まっているだろ！俺たちの運気が良ければさ！」
ラーンの言葉は自信に満ち溢れていたが、イシェにはどこか虚しさを感じた。
「まあ、いいわ。でも今回は本当に慎重に進もうね。あの塔は噂では呪われているって聞いたことがあるのよ」
イシェの言葉に、ラーンは少しだけ眉をひそめた。
「呪い？そんなもの気にしないよ！俺たちにはテルヘルさんがいるんだからな！」
テルヘルは今日もいつものように、冷静沈着に地図を広げていた。彼女の鋭い視線は、まるで遺跡全体を貫き通しているようだった。
「準備はいいか？」
テルヘルの声が響くと、ラーンとイシェは頷き合った。彼らは互いに言葉は交わさなくても、長い年月の中で築き上げた信頼関係で繋がっていた。
三人は塔の入り口へと向かった。崩れかけた石壁の間から差し込む光は、薄暗く不気味な雰囲気を醸し出していた。
「ここは…何か違う」
イシェが呟くと、ラーンの表情も少し曇った。確かに、この遺跡には今までとは違う重苦しい空気が漂っていた。まるで、古代の言葉で書かれた呪文が壁に刻まれているように感じられた。
「何だ、イシェ？怖くなったのか？」
ラーンの挑発的な言葉に、イシェは苦笑した。
「そんなことはないわ。ただ…何かを感じただけよ」
テルヘルは沈黙を保ちながら、遺跡の奥へと足を踏み入れた。三人の影が壁に長く伸び、まるで追いかけるように、塔の奥へと進んでいった。
彼らの前に広がるのは、忘れ去られた古代文明の秘密だった。そして、その秘密を守るために、彼らは危険な試練に立ち向かうことになるのだ。