ラーンが巨大な石の扉を押し開けた時、埃が舞い上がり、薄暗い遺跡内部をさらに暗くした。イシェは咳き込みながら懐中電灯を点け、「またしても大層な期待を抱かせておいて、結局はただの空洞か…」と呟いた。ラーンは肩をすくめ、「そうじゃなくても、何かしら残骸があるかもしれないだろ?ほら、あの石の破片、見ろよ!」と、興奮気味に指さした。イシェが目を凝らすと、確かに壁面に奇妙な模様が刻まれていた。「これは…」イシェは言葉を失った。
テルヘルは静かにその模様を眺めた。「言祝ぎだ」と呟いた。「古代の儀式で用いられたものだ。この遺跡には何か、大きな力が眠っている可能性がある」彼女の目は鋭く光り、興奮を抑えきれない様子だった。ラーンが「じゃあ、早速探検だ!」とばかりに駆け出そうとした時、イシェは彼の腕を掴んだ。「ちょっと待った。テルヘル、この言祝ぎの意味するところは?」
テルヘルは少しの間沈黙した。「この遺跡の奥深くには、ヴォルダンに奪われた私の大切なものがある。あの言祝ぎは、その場所への指針となるはずだ」彼女はゆっくりと口を開き、「そして、それを手に入れるために、私はどんな犠牲も払う覚悟ができている」と宣言した。ラーンの瞳が一瞬で輝き、イシェは言葉を失い、ただ二人の背中を見送るだけだった。