ビレーの tavern に響き渡るラーンの豪快な笑い声。イシェは眉間に皺を寄せて酒を一口飲む。
「また大穴の話か。いつまでそんな空想に溺れるつもりだ？」
「あはは、イシェったらいつも面白くねーな！いつか必ず掘り当ててやるぞ、この手で！」ラーンは拳を握りしめながら目を輝かせた。
イシェはため息をつき、テーブルに置かれた地図を広げる。「今日の遺跡はあの西の谷にある小さな祠だ。テルヘルが言うには、そこには古代の魔導具が眠っているらしい」
「魔導具か…！」ラーンの目はさらに輝いた。イシェは彼の様子をみて、少しだけ微笑んだ。彼の夢を否定するつもりはない。ただ、現実を見てほしいと願うだけだ。
テルヘルは静かにテーブルに腰掛け、鋭い目を地図に落とす。「祠の入り口は崩落しているらしい。危険だが、その奥には価値あるものがあるという情報を得た」
ラーンの顔色が曇った。「危険か…」
「だが、報酬も高い。危険と引き換えに、我々に必要なものは手に入るだろう」テルヘルは冷めた声で言った。イシェは彼女の視線を感じ、何かを察した。
「あの…テルヘルさん、実はあの祠について、少し調べてみました」イシェは言葉を濁すように言った。「地元の人々によると、あの祠には呪いがあると伝えられているんです。近づくと不幸に見舞われる…」
ラーンの顔色はさらに青ざめた。だが、テルヘルは涼しい表情で言った。「ただの迷信だ。我々の目的を達成するためには、そんな噂に惑わされるわけにはいかない」
イシェはテルヘルの言葉を聞いて、何かが引っかかるのを感じた。彼女はテルヘルの目を見つめた。その瞳には、何かを隠すような、冷酷な光があった。
「わかった…行くぞ！」ラーンの声が tavern に響き渡り、イシェは深くため息をついた。あの祠に眠るものは一体何なのか？そして、テルヘルが真に求めているものとは？イシェは不安と疑念を抱きつつ、ラーンと共に遺跡へと向かった。
日が暮れ始めた頃、彼らは祠の入り口に到着した。崩落した石 rubble はまるで巨大な獣のように、彼らを威嚇しているようだった。ラーンの顔には緊張の色が浮かんでいる。
「よし、行くぞ！」ラーンは深呼吸をして、石 rubble の隙間をくぐり抜けた。イシェは彼の後を追い、テルヘルが後ろから続いた。
祠の中は薄暗く、不気味な静けさが漂っていた。イシェは背筋がゾッとするような感覚に襲われた。ラーンは懐中電灯を点けて周囲を探したが、何も見つからない。
「ここ…何か変だ」イシェは不安そうに言った。
「何かあったのか？」テルヘルは冷静な声で言ったが、彼女の瞳にはわずかな光が宿っていた。
その時、突然、祠の奥から不気味な音が響き渡った。ラーンとイシェは驚いて振り向くと、そこには巨大な影が立っていた。影はゆっくりと彼らに近づいてくる。
「なんだあれ…！」ラーンの声は震えていた。イシェは剣を握りしめ、恐怖を抑えようと努めた。テルヘルは冷静に状況を見極めようとしていたが、彼女の瞳には、今まで見たことのない恐怖の色が宿っていた。
影が彼らに迫り、ついにその姿が明らかになった。それは巨大な獣であり、鋭い牙と爪を持ち、その体からは邪悪なオーラが漂っていた。ラーンは剣を抜き、イシェも必死に抵抗を試みた。しかし、その獣の力は圧倒的だった。
ラーンの剣は獣の体に届かず、イシェの攻撃もかわされてしまう。彼らは獣の猛攻の前に押され、絶体絶命の危機に陥っていた。その時、テルヘルが獣に向かって何かを叫んだ。
「お前を倒せば…全てが終わる！」
テルヘルの言葉に、獣は一瞬だけ怯んだように見えた。イシェは彼女の言葉を聞き、何かを悟ったような気がした。テルヘルは一体何を知っているのか？そして、この獣は何なのか？イシェは混乱と恐怖の中で、真実を探し求めていた。