「よし、今日はこの遺跡だ！」ラーンが地図を広げると、イシェは眉をひそめた。「また、あの辺り？ ラーン、さっきも言ったじゃないのか。あの遺跡は危険だぞ。罠だらけだって噂だろ」
ラーンは軽く笑って、「大丈夫だよ、イシェ。俺がしっかり見てるから。それに、テルヘルさんもここに来たんだろ？ 彼女の言うことは間違いないはずだ」
イシェはテルヘルの存在にため息をついた。「あの女性は、一体何を考えているんだろうね…」テルヘルは鋭い目つきで遺跡の入り口を見つめていた。彼女の目的は遺跡の探索そのものよりも、何か別のものがあるように思えた。イシェは不安を感じながらも、ラーンと一緒に遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡内部は薄暗い。湿った空気が肌に張り付き、不気味な静寂が響いていた。「やっぱり罠だ…」イシェは足元に仕掛けられた針を慎重に避けた。「ラーン、気をつけろ！」
「わかってるよ！」ラーンは剣を構え、周囲を警戒しながら前進した。しかし、その時、壁から突如矢が飛び出してきて、ラーンの腕に刺さった。
「ぐっ…！」ラーンが倒れ込むと、イシェは慌てて駆け寄った。「ラーン！大丈夫か？」
「うっ…」ラーンは苦しそうに息を吐き出した。「俺のせいだ…あの地図…間違っていたのかもしれない…」
イシェはラーンの腕を抑えながら、彼の顔を見た。「違う、ラーンのせいじゃない。罠にはめられたんだ」
その時、テルヘルが冷静な声で言った。「地図は偽物だ。ヴォルダンからの言い訳にすぎない」
イシェは驚いてテルヘルの方を見た。「言い訳…？ 何を…」
テルヘルは冷たい目でイシェを見据えた。「あの地図はヴォルダンが用意した罠だ。ラーンを陥れるために、わざと危険な遺跡へと導いたのだ」
イシェは言葉を失った。ラーンの無計画さは確かに問題だったが、今回の件は明らかに誰かの策略だった。そして、その背後にヴォルダンがいることは明らかだった。