ビレーの朝焼けが空を染め始めた頃、ラーンはいつも通りイシェを起こしに来た。イシェはまだ薄暗い部屋で寝ぼけていた。「起きろ、起きろ！今日はテルヘルが待ってるんだぞ！」ラーンの声でイシェはゆっくりと目を開けた。「また遺跡か…」「そうさ、大穴が見つかるかも！」ラーンの目は輝いていた。
二人は小さな朝食を済ませると、テルヘルの待つ場所へと向かった。今回はヴォルダンとの国境に近い遺跡を探検する予定だった。危険な場所だったが、報酬は格別だった。テルヘルはいつも冷静に地図を広げ、「ここは特に注意が必要だ」と説明した。
遺跡の入り口に近づくと、ラーンの顔色が変わった。「なんか…嫌な予感がする」「気にすんな、大穴があるかもしれないぞ！」ラーンの言葉にイシェは苦笑した。しかし、遺跡の中に入ると、確かに不気味な雰囲気が漂っていた。壁には奇妙な文字が刻まれており、空気が重苦しく感じた。
テルヘルは慎重に進むよう指示した。彼女はいつも冷静さを保ち、周囲を警戒していた。ラーンの無計画さにイシェが呆れる場面もあったが、危険な場所ではラーンの勇気に助けられたことも多かった。三人は互いに補い合いながら遺跡の奥深くへと進んでいった。
そしてついに、彼らは大きな部屋にたどり着いた。中央には巨大な石碑がそびえ立っていた。石碑には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように輝いていた。テルヘルは目を輝かせ、「これだ！」と叫んだ。
その時、床から黒い煙が立ち上り、部屋中に広がった。イシェは咳き込みながら「これは…！」と声を上げた。ラーンは剣を抜き、警戒した。煙の中から巨大な影が現れた。それは奇妙な形をした怪物だった。
三人は慌てて剣を取り出し、怪物に立ち向かった。激しい戦いが始まった。ラーンの力強い攻撃、イシェの素早い動き、テルヘルの冷静な指示が一つになって、怪物にダメージを与えていった。しかし、怪物は強靭な体と再生能力を持ち、なかなか倒れなかった。
苦しい戦いの末、ついにラーンの一撃が怪物に致命傷を与えた。怪物は轟音と共に崩れ落ち、部屋中に塵が舞った。三人は息を切らしながら立ち上がり、互いに安堵の表情を見せた。
「やった…」イシェは疲れた様子で言った。「大穴は見つからなかったけど、今回は本当に危なかった」ラーンは苦笑いしながら言った。「だが、生きて帰ってこれたのは奇跡だ」テルヘルは冷静に言った。「そして、私たちはまた一歩ヴォルダンへの復讐に近づいたのだ」
三人は遺跡を後にし、ビレーへと戻っていった。夕暮れの空がオレンジ色に染まっていた。彼らは疲れた体を引きずりながらも、どこか誇らしげな表情をしていた。今日も彼らは生きて帰ってきたのだ。そして、明日もまた、新たな冒険が始まるだろう。