ラーンの豪快な笑い声がビレーの狭い路地裏にこだました。
「どうだイシェ！あの宝箱には確かに宝石が入ってたぞ！」
イシェは眉間に皺を寄せながら、ラーンが手にした小さな木製の箱をじっと見つめた。その中には、わずかに輝く石が数個入っているだけだった。
「ラーン、あれじゃ hardly 宝石とは言えないだろう」
「まあ、いいじゃないか！いつか大穴を掘ったら、そんな小さい宝石なんて気にしなくなるぞ！」
ラーンの言葉にイシェはため息をついた。彼にはいつも、いつまでもこの小さな街にとどまるつもりがないという気がしていた。まるで、いつか大きな宝を見つけたら、この街を後にするつもりでいるかのようだった。
「それで、テルヘルは何と言った？」
ラーンが箱をポケットにしまい込むと、イシェに尋ねた。テルヘルは今日も遺跡の調査を依頼してきた。彼女はいつも冷静で、目的意識の強い女性だった。
「次の遺跡は、ヴォルダンとの国境近くにあるらしい」
イシェの言葉に、ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…」。彼は少しだけ沈黙した。
テルヘルがヴォルダンについて語ることは稀だった。しかし、彼女の瞳にはいつも、深い憎しみが宿っているように見えた。
「あの遺跡は危険だと言ってたぞ」とイシェは続けた。「罠が多いらしい」
ラーンは小さく頷いた。彼はテルヘルの言葉を信じているようだった。そして、彼女が何か隠しているとも感じていた。
「でも、報酬はいいよな？」とラーンは少しだけ明るい声で言った。イシェは彼の背中に、どこか寂しげな影を感じた。
彼らは今日も遺跡へと向かう。危険な場所だとしても、彼らには希望があるように見えた。それは、いつか大きな宝を見つけられるかもしれないという、小さな希望だった。しかし、イシェは心の奥底で、ラーンの希望がいつまでも続くのか、そして、テルヘルが本当に何を望んでいるのかを疑問に思っていた。