ラーンの粗雑な足取りが埃を巻き上げ、イシェの鼻腔をくすぐった。「もう少し丁寧に歩けよ、ラーン。遺跡に入る前に埃まみれになる必要はないだろう」 イシェは眉間に皺を寄せながら言った。ラーンは振り返り、「気にすんなって。こんな埃くらい慣れてるだろ？」と笑って答えたが、イシェの表情に少しだけ引け目を感じた。
「それに、テルヘルさんだって足音を立てずに進むのに、お前だけが…」 イシェが言葉を続けようとしたその時、後ろから冷ややかな声が聞こえた。「イシェ、そんなに彼を叱る必要はないわ。あなたはいつも通り慎重すぎるのよ」 テルヘルは影のように二人の後ろに現れ、鋭い視線でラーンを見据えた。
「それに、この遺跡は危険な場所だ。足音一つが命取りになるかもしれない。だから、少しは落ち着いて行動しましょう」テルヘルの言葉には、ラーンの軽率さに対する叱責だけでなく、イシェへの配慮も感じられた。「そうだな、今回はテルヘルさんの言う通りにしようぜ」ラーンは渋々頷き、イシェの方を見つめた。
イシェはラーンの視線を感じ、少しだけ頷いた。「わかった。では、注意深く進もう」 しかし、その言葉の直後、ラーンの足が滑り、近くの石を蹴飛ばした。石は空中に舞い上がり、遺跡の奥深くへと消えていった。
「しまった！」ラーンは慌てて石を追いかけようとしたが、テルヘルが彼の腕を掴んだ。「無駄だ。あの石はすでに…」 テルヘルは言葉を濁し、イシェに視線を向けた。「何か問題でも？」 イシェは鋭く尋ねた。テルヘルは少しだけためらった後、ゆっくりと口を開いた。「あの石には…呪いがあるかもしれない」
ラーンの顔色が変わった。「呪い？そんな…」 イシェも眉をひそめた。「まさか、そんな…」 しかし、テルヘルの表情は真剣そのものだった。
「あの石に触れた者は…。」 テルヘルは言葉を続けようとした瞬間、背後から不気味な音が響き渡った。ラーンとイシェは振り返ると、遺跡の奥深くから不気味な光が漏れているのが見えた。