「よし、今回はあの崩れた塔の奥だ。噂じゃ、そこには古代兵器が眠ってるらしいぞ」ラーンの声はいつもより高かった。イシェは眉間に皺を寄せた。「また噂話か？ そんなもの、本当にあるわけないだろう。それに、ヴォルダン軍が動き出す前に遺跡探索は控えた方が…」
「大丈夫だって！ テルヘルさんが言うように、あの遺跡はヴォルダンにとっても価値あるものだ。そしたら、僕たちには安全な場所にいる権利があるってことだろ？」ラーンの言葉にイシェは言い淀んだ。テルヘルは冷静な表情を崩さず、「準備はいいか？」とだけ言った。
崩れた塔の入口付近では、何者かの足跡があった。新鮮なものではないようだが、最近誰かがこの遺跡を探していたことは確実だった。ラーンは剣を構え、「誰だ？ 出ろ！」と叫んだが返事はなかった。イシェはラーンの腕を引き止めようと試みるが、ラーンは動こうとしなかった。
「待てよ…何か変だ」イシェの言葉にラーンは振り返った。「変…って？」その時、背後から不気味な音が響き渡った。それは金属が擦れる音だった。ラーンの表情が硬くなった。ゆっくりと振り返ると、そこには巨大な機械獣が立っていた。その目は赤く光り、鋭い牙をむき出しにしていた。
「これは…！」イシェは言葉を失った。ラーンは剣を握りしめ、「逃げろ、イシェ！ 」と叫んだが、すでに遅かった。機械獣は凄まじいスピードでイシェへと襲いかかった。