ラーンの大雑把な指示に従い、イシェは慎重に石板の隙間を覗き込んだ。埃っぽい空気が流れ込み、薄暗い内部にわずかに光が差していた。
「どうだ?」
ラーンの期待に満ちた声が響く。イシェはためらいながら言った。
「何かあるみたいだけど… 危険な予感がする。あの扉の向こうには一体何があるんだろう…」
「そんなこと言っちゃいけねえよ!大穴が見つかるかもって思うとワクワクするだろ?」
ラーンの言葉に、イシェは苦笑した。彼の楽観的な姿勢は、時に彼女を安心させるが、同時に不安を増幅させることもあった。
テルヘルは冷静な表情で地図を広げ、石板の位置を確認していた。
「この遺跡はヴォルダン帝国の記録にも残っていない。未知の危険が潜んでいる可能性が高い。慎重に進もう。」
彼女の言葉にラーンは少しだけ気を引き締めた様子を見せた。イシェはテルヘルの言葉に安心する一方で、彼女が隠している何かを感じ取ることが出来なかった。
「よし、行こう!」
ラーンの一声で、三人は石板の隙間をくぐり抜け、暗い遺跡内部へと足を踏み入れた。
一歩踏み入れると、湿った冷気が肌を刺すように感じられた。イシェは背筋がぞっとするような感覚に襲われた。
「ここは…何か違う…」
彼女は呟いた。ラーンとテルヘルは彼女の言葉に振り返り、互いに顔を見合わせた。
「何だ? イシェ」
ラーンの問いかけに、イシェは言葉を濁した。彼女は自分の直感を信じることが出来なかったのだ。
三人は遺跡の奥へ進んでいく。しかし、その先には想像を絶する光景が広がっていた。それは、彼女たちの解釈を覆すものであった。