「おいイシェ、今日はいい感じの空気が流れてるぞ!」ラーンが拳を握りしめ、遺跡の入り口を見据えた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩越しに古びた石畳を確かめていた。「また無茶なことを考えているんじゃないだろうな。あの崩れかけた通路は危険すぎるよ」
「大丈夫大丈夫!俺が先頭を切って道を開けばいいんだ!」ラーンはそう言って、イシェの制止も聞かずに遺跡へと駆け込んでいった。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けた。「彼のことだから、また何かやらかすと思うわ」
テルヘルは冷静な表情で頷いた。「準備は万端だ。彼の無茶を補うのが私の仕事だ」彼女は小さな袋から瓶を取り出し、中身の赤い液体を確認した。それは貴重な解毒剤だった。ヴォルダンとの戦いで得た情報によると、この遺跡には強力な毒を持つ生物が生息しているらしい。
「あの遺跡は危険だぞ。特に奥深くになるとね…」テルヘルがそう言うと、イシェは不安げに頷いた。ラーンの無茶な行動を補うだけでなく、自分たちも安全を確保しなければいけないのだ。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気で満たされていた。ラーンの軽快な足音だけが響き渡る。しばらく進むと、壁に奇妙な模様が刻まれており、イシェの眉をひそめさせた。「これは…見たことがない記号だ」
「何かの罠かもしれないぞ…」ラーンは警戒しながらも、好奇心に駆られて前に進もうとした。その時、地面から突然黒い影が伸び上がり、ラーンの足を絡め取った。
「ぐっ…!なんだこれは!」ラーンの叫び声が響く。イシェは慌てて駆け寄り、影の正体を確認した。「巨大な毒蛇だ!ラーン、気をつけろ!」
ラーンは必死に蛇を振り払おうとしたが、その毒牙は彼の腕に深く食い込んだ。苦しみながら倒れ込むラーンを見て、イシェはパニックになった。「テルヘル、解毒剤!早く!」
テルヘルは冷静さを保ちながら、ラーンの口元に瓶の口を近づけた。「落ち着け、ラーン。大丈夫だ」
ラーンの顔色は青白だったが、意識は朦朧としているだけであった。彼女はゆっくりと解毒剤を流し込んだ。そして、イシェに指示した。「あの蛇を倒す必要がある。私が気を引くので、その隙にラーンの安全確保を頼む」
イシェは頷き、剣を抜いて蛇へと向かった。テルヘルは魔法の力を使い、蛇の注意を自身に向けさせた。激しい戦いが始まった。イシェの剣が蛇の鱗を切り裂き、テルヘルの魔法が蛇の動きを封じる。
激しい攻防の末、ついにイシェの剣が蛇の心臓に突き刺さった。蛇は大きくうなり声を上げながら、地面に倒れ込んだ。イシェは息を切らしながら剣を下げ、ラーンの元へと駆け寄った。
「大丈夫か?ラーン!」
ラーンの顔色は徐々に血色を取り戻し、意識も戻り始めた。「イシェ…ありがとう…」
テルヘルが近づき、ラーンを支えた。「まだ危険は去ってない。遺跡の奥深くに進む前に、しっかりと休め」
ラーンの無茶な行動は、彼らを危機に陥れることになった。だが、イシェとテルヘルの冷静さと協力によって、彼らは危機を乗り越えることができた。そして、この経験を通して、彼らはより強い絆で結ばれていった。