ラーンの粗雑な斧の swing が埃を巻き上げる。崩れかけた石柱が轟音と共に倒れ、奥へと続く通路が姿を現す。イシェは眉間に皺を寄せ、石塵を払いのけながら内部を覗き込んだ。「ここか…」。
「よし、行こう!」
ラーンの元気な声に反して、イシェの心には不安が広がる。この遺跡はビレー周辺では比較的新しいもので、まだ解明されていない部分が多い。噂ではヴォルダンが何らかの目的で調査を進めているという話もあった。
テルヘルは冷静に周囲を警戒しながら言った。「罠の可能性もある。慎重に進もう」。
彼女の鋭い視線は、壁のひび割れや床の石畳の配置にも向けられる。まるで生きた生物のように遺跡を観察しているようだ。イシェはそんな彼女の姿を見て、改めてテルヘルの目的の深さを認識した。復讐心は単なる感情ではない。何かに突き動かされているかのようだった。
通路を進むにつれ、壁には奇妙な文様が刻まれていた。まるで解剖図のように、人間の身体が細かく部位ごとに描かれている。イシェは不気味さと同時に、どこか見覚えのあるような感覚に襲われた。
「これって…」
ラーンが指さす方向には、壁一面に広がる巨大な図案があった。それは、まるで人間を解体し、内部の骨格や器官を詳細に描き出したものだった。イシェは背筋が寒くなるのを感じた。この遺跡が秘める真実は、想像を絶するものではないかと。
その時、床から不規則な音が聞こえた。イシェは一瞬で状況を把握した。罠だ。
「ラーン!後ろ!」
イシェの声と共に、床板が崩れ、鋭利な棘が飛び出した。ラーンの素早い反応で危機を回避するが、彼の衣服は切り裂かれ、血が滲み始めた。
テルヘルは冷静に剣を抜いた。「誰だ?出てこい!」
影の中から、数人の男が現れた。ヴォルダンの兵士だ。彼らは遺跡調査を妨害するために派遣されたものだった。
「お前たち…!」
ラーンの怒号が響く中、イシェは冷静さを保った。状況を分析し、最善の行動を選択する。
「逃げるんだ!ラーン!」