「よし、今回はあの崩れかけた塔だな！ 噂には古代の王家の墓があるって話だぞ！」
ラーンが拳を握りしめながら興奮気味に言った。イシェは眉間にしわを寄せて地図を広げた。
「またしても無計画な…あの塔は危険だって聞いたことがあるわよ。崩落寸前らしいし、そもそも王家の墓なんてただの噂でしょう。」
「そんなこと言わずに！ 大穴が見つかるかもしれないぞ？ さあ、テルヘルさん、どうだ！」
ラーンが目を輝かせてテルヘルを見る。彼女はいつものように冷静な表情で地図を睨んでいた。
「塔の遺跡は危険だが、そこにはヴォルダンが探し求めているものがある可能性が高い。我々の目的のためにも調査する必要がある。」
彼女の言葉にラーンの顔色が変わった。イシェはテルヘルの意図を感じ取り、不安げに言った。
「テルヘルさん、あなたは何を？」
しかしテルヘルは答えず、単に頷き、立ち上がった。ラーンとイシェは互いの顔を見合わせた後、渋々ながら立ち上がった。
塔の入り口では、冷たい風が吹き荒れていた。崩れかけた石畳を進むにつれ、不気味な静寂が彼らを包み込んだ。イシェは不安そうに後ろを振り返ったが、ラーンの背中が頼もしく見えた。
「大丈夫だ、イシェ。俺たちが守るから。」
ラーンはそう言って剣を構えた。彼の言葉に少し安心したイシェは、懐かしさと切なさを覚える。かつて二人はこんな風に冒険を楽しんでいたものだった。しかし今は違う。テルヘルという謎の女性が加わり、彼らの冒険には新たな目的、そして危険が伴うようになっていた。
塔の奥深くでは、ヴォルダンとの戦いの影が彼らを待ち受けている。そして、その影に隠された真実とは…。