「よし、今回はあの崩れた塔だ!」 ラーンが目を輝かせ、荒れ果てた遺跡の地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を睨んだ。「また大穴の話か? ラーン、あの塔は危険だって聞いたことがあるぞ。罠だらけらしい」
「大丈夫だ、イシェ!俺たちならなんとかなるさ!」 ラーンの言葉にイシェはため息をついた。「いつもそう言うよね…」
その時、背後から涼しい声が聞こえた。「準備はいいか?」 テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろした。ラーンはニヤリと笑って剣を手に取った。「もちろんだ、テルヘルさん!今日は大穴が見つかる予感がするぜ!」 イシェはテルヘルの冷酷な表情を見て、不安になった。
崩れた塔の入り口に差し掛かった時、ラーンの足が止まった。「イシェ…」 彼の声は震えていた。 rubbleの下から、見覚えのある青い布切れが覗いていた。「あの…あの布切れ…」 イシェも息を呑んだ。それは、ラーンが幼い頃に親友と遊んでいた時に紛失した、大切なハンカチだった。
「まさか…」 イシェは言葉を失った。ラーンの幼馴染で親友だった少年は、数年前にヴォルダン軍に襲撃され、命を落としたはずだった。 ラーンは、青いハンカチを握りしめ、静かに塔へと入っていった。イシェはラーンの背中に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。彼は、ラーンのために、そして親友のために、危険な塔へと続く道を歩む決意をした。テルヘルは二人の様子をじっと見つめていた。彼女の瞳に、わずかな同情の色が浮かんだ。