ビレーの賑やかな市場を背に、ラーンがイシェに肩を叩いた。
「よし、今日はあの新遺跡だ！テルヘルが言ってた、黄金の扉があるってんだぞ！」
イシェは眉間にしわを寄せた。「またそんな噂話か。確認もせずに飛びつくなんて、いつまで続くんだ…」
「まあ、いつか大穴に巡り合うはずだろ？それに、テルヘルがくれた地図には確かに描かれていたぜ！」
ラーンの言葉に引っ張られるように、イシェはため息をつきながら遺跡へと向かった。
日差しが容赦なく照りつける中、3人は遺跡の入り口にたどり着いた。崩れかけた石柱と苔むした階段だけが、かつて栄華を極めた文明の名残を物語っていた。
「よし、準備はいいか？」テルヘルが鋭い視線で周囲を警戒しながら言った。「遺跡内には罠が仕掛けられている可能性もある。油断するな」
ラーンは剣を抜いて頷き、イシェも慎重に動き始めた。
テルヘルが地図を広げながら進路を示す中、ラーンの注意は別の場所に奪われていた。崩れかけた壁の隙間から覗くと、そこには薄暗い通路が見えた。黄金の扉の存在など気にもならず、ラーンは好奇心に駆られてそっと近づいていった。
イシェはラーンの不自然な動きに気づき、振り返った。「何をしているんだ、ラーン？」
「あの、あっち見てみろよ！」ラーンが指差す方向には何もなく、イシェは眉をひそめた。「何を見ているんだ？早く戻ろう」
ラーンの視線は壁の隙間から覗き込むように固定されていた。そこに映し出されるのは、狭い通路の奥深くへと続く光景だった。
「何か見えるか？」イシェが尋ねたが、ラーンは何も答えず、ただじっと覗き続けていた。その様子に、イシェは不吉な予感を抱くのであった。