ラーンの大声がビレーの朝霧を切り裂いた。「おい、イシェ！今日はあの遺跡だぞ！」
イシェは眠そうな目でラーンを見上げた。「またあの遺跡？ 幾度も調査してるだろう。新しい情報でもあるのか？」
「いや、でもな、あの遺跡、実は…」ラーンの言葉が途切れた。「あいつ来てるぞ」
テルヘルが鋭い目で二人を見つめていた。「準備はいいか？ 今日こそ、何か見つけるべきだ」
ビレーの遺跡探索は、いつも同じようなものだった。危険を冒して遺物を探し、わずかな報酬を得る。規約で定められた最低限の安全対策さえ守れば、あとは自由だと言われたが、その自由は常に危険と隣り合わせだった。
「よし、行くぞ！」ラーンの言葉に導かれ、3人は遺跡へと向かった。遺跡の入り口には、いつも通りの警告文があった。規約を遵守し、遺物を持ち出す際には許可を得ること。そして、遺跡内の安全確保は自己責任であること。
イシェはため息をついた。「またあの警告か…」
ラーンは全く気にせず、遺跡の中へ飛び込んでいった。
「待てよ、ラーン！」テルヘルが後を追いかけた。イシェは二人を見つめながら、規約に縛られた彼らの行動を考え込んだ。
遺跡内部は薄暗く、埃っぽかった。壁には古びた文字が刻まれていた。テルヘルは慎重に周囲を観察し、イシェはラーンの動きに注意深く目を配った。
「ここだ！」ラーンが突然叫んだ。「何か見つけたぞ！」
ラーンの指さす方向には、奇妙な石の板が置かれていた。石板には複雑な模様が刻まれており、まるで生きているかのように光っていた。
「これは…！」テルヘルは目を丸くした。「この模様は…」
彼女は興奮を抑えきれずに石板に触れた瞬間、遺跡全体が揺れ始めた。壁から崩れ落ちる石が彼らに襲いかかってくる。
「逃げろ！」イシェが叫んだ。
3人は慌てて出口へと走り出した。しかし、出口は崩れ落ちており、戻れない状態だった。
「どうする？」ラーンの顔色が青ざめた。
テルヘルは冷静さを保ちながら言った。「落ち着け。規約には緊急時対応に関する条項があるはずだ…」
イシェは恐怖を感じながらも、テルヘルの言葉に希望を見出した。規約の条項…それは彼らをこの危機から救う唯一の方法だったかもしれない。