「よし、行くぞ！」ラーンの豪快な声がビレーの街角に響き渡った。イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら彼を見つめた。「またあの遺跡か？ 結局いつも何も見つからないじゃないか。」
「いやいや、今回は違うって！ この遺跡には必ず何かあるはずだ！」ラーンは自信満々にそう言い切ったが、その目はどこか自信なさげに見えた。イシェはため息をつきながら、後ろから続くテルヘルの様子を伺った。彼女はいつも通り無表情で、何物にも動じないかのようだった。
遺跡の入り口には、崩れかけた石柱がそびえ立っていた。かつて栄華を極めた文明の名残を感じさせるその姿は、いつしか人々の記憶から見失われていた。ラーンは興奮気味に石柱に触れた。「さあ、イシェ！ テルヘル！ 大穴が見つかるぞ！」
中へと足を踏み入れると、薄暗い通路が続いている。壁には奇妙な模様が刻まれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。イシェは懐中電灯の光を当てながら慎重に前を進んだ。ラーンの足音だけが響く静寂の中で、何かが彼らの背後からゆっくりと迫ってくるような気がした。
「ちょっと待てよ。」イシェは振り返り、周囲を見渡した。「何か変だぞ。」だが、何もない。ラーンは不機嫌そうに言った。「何をしているんだ？ 早く進もうぜ！」イシェはためらいながらも彼に後についていった。
しばらく進むと、通路が二手に分かれた。ラーンは迷わず右側の道を進んでいったが、イシェは何かを感じ取ることができた。左側の道から薄っすらと光が漏れているのだ。彼女はラーンの腕を掴んで引き止めようとしたが、彼はもう先へ進んでしまった。「ラーン！ちょっと待て！」
しかし、ラーンの姿はすでに暗闇に消えていた。イシェは恐怖を感じながら、振り返った。そして、その瞬間、背後から何かが彼女を襲った。