ビレーの賑やかな市場を背に、ラーンはイシェに声をかけた。「今日はあの遺跡だな?あの噂の石碑があるって聞いたぞ!」
イシェは眉間にしわを寄せた。「また噂話か?ラーン、そんなものに惑わされてばかりじゃ何も見つからないよ。今日はあの古い地図に基づき、あの崩れかけの塔を探すべきだ」
「あ〜、地図?それって結局何年も前に見つけたあの、謎の文字だらけのやつだろ?解読できたのか?」
イシェはため息をついた。「まだだ。でも、あの塔には何かがあるという確信があるんだ。それに、テルヘルもその場所に興味を示している」
ラーンの表情が曇った。「テルヘルか…あの女は何を考えているんだ?いつも俺たちの動きに首を突っ込んでくる…」
「彼女はヴォルダンとの復讐を果たすために、遺跡から何かを探しているのだろう。そして、そのために私たちを利用しているのかもしれない」
二人は沈黙のうちにビレーの外れへと歩き出した。夕暮れの赤い光が、崩れかけた塔の影を長く伸ばしていた。
「よし、行くぞ!」ラーンは剣を抜いて塔に駆け込んだ。イシェは後を追うように塔の中へと入った。埃っぽい空気が二人の喉を刺す。壁には不思議な模様が刻まれており、まるで生き物のように蠢いているようだった。
「ここ…何か違う…」イシェは不吉な予感を感じた。
その時、塔の奥深くから鈍い音が聞こえてきた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。
「何の音だ?」
「知らない…でも、警戒すべきだ!」
二人は慎重に音を追いかけた。音は次第に大きくなり、金属的な響きを帯びてきた。ついに、彼らは巨大な扉の前にたどり着いた。扉には複雑な模様が刻まれており、まるで生き物のように脈打っているように見えた。
「これは…?」ラーンは扉に触れた瞬間、激しい衝撃を受けた。彼の頭の中で、フラッシュバックのように様々な映像が駆け巡った。古代文明、高度な技術、そして、そっくりそのままの自分の姿…。
「ラーン!どうしたんだ?」イシェが駆け寄ってきた。「お前は何を見たんだ?!」
ラーンは意識を朦朧とさせながら言った。「あの扉…何かが封印されている…そして…」彼は目を輝かせた。「僕の中に…その鍵があるみたいだ」
その時、扉がゆっくりと開き始めた。そこから放たれた光は、二つの影を照らし出した。一方はラーンの姿であった。もう一方の影は…彼自身にも見覚えのない、不気味な存在だった。それはまるで、ラーンの複製のような…。