「よし、今日はあの崩れた塔だ！」ラーンが目を輝かせると、イシェはため息をついた。「また危険な場所かい？ ラーン、あの塔は噂で呪われているって聞いたよ」
「そんなの気にすんな！ 大穴が見つかるかもしれないぞ。ほら、テルヘルさんも賛成してくれてるだろ？」
テルヘルは薄暗い表情で頷いた。「あの塔には古代の魔導技術に関する記録が残されている可能性がある。それを手に入れればヴォルダンへの復讐に一歩近づく」彼女の言葉は冷酷な決意に満ちていた。
ビレーを出発し、荒涼とした山道を行く三人の背中には、夕暮れの光が長く伸びていた。イシェはラーンの無鉄砲さに不安を感じつつも、テルヘルの目的を考えると、この遺跡探索に意味があるのかもしれないと自分に言い聞かせた。
崩れた塔の入り口には奇妙な紋章が刻まれており、不気味な静けさだった。内部は埃っぽく、朽ちかけた石柱だけが立ち並び、かつての栄華を偲ばせた。ラーンは興奮を抑えきれない様子で、剣を構えて先へ進もうとしたが、イシェは彼を制した。「ちょっと待て。ここは罠があるかもしれない」
テルヘルが魔法のランプを点けると、壁に奇妙な文字が見えた。「これは...古代ヴォルダン語だ」テルヘルは眉間にしわを寄せた。「この塔はヴォルダンの先祖が築いたものなのかもしれない。危険度が増したぞ」
慎重に進みながら、彼らは塔の奥深くへと進んでいく。やがて、一つの部屋にたどり着いた。その中央には、金色の光を放つ巨大な石碑が鎮座していた。
「これは...！」ラーンの声が震えた。「大穴だ！」
イシェは石碑に刻まれた複雑な模様をじっと見つめた。それは単なる装飾ではなく、高度な魔法技術で形成されたものだった。この石碑は単なる遺物ではなく、古代の力を秘めた装置であることを悟った。
「この石碑を活性化できれば、ヴォルダンを滅ぼす強力な武器を得られるかもしれない」テルヘルは目を輝かせた。「だが、そのために必要なものは...」
彼女は三人の前に広がる部屋を見渡した。そこには、無数の古代の書物や装置が整然と並んでいた。それは、かつてこの塔で研究されていた膨大な知識と技術を秘めた宝庫だった。
イシェは息をのんだ。「これは...信じられない。ラーン、この石碑とこれらの知識があれば、僕たちの未来は大きく変わるかもしれない」
ラーンの顔には興奮の色が浮かぶ一方で、イシェの心には複雑な感情が渦巻いていた。この塔で発見されたものは、単なる財宝や武器ではない。それは、古代の力と知識を未来へと繋ぐ鍵だった。その影響は、彼らの人生だけでなく、エンノル連合、そしてヴォルダンをも巻き込み、歴史を変えるほどのものになるかもしれない。
イシェは深く考え込んだ。「ラーン、テルヘルさん...僕たちは本当に、複利のような大きな変化を引き起こすことになるのかもしれない」