「おいラーン、あの石碑、なんか変だな」イシェの指が、苔むした石碑の表面をなぞった。
「変って?ただの古い石だぜ。早く宝探さないと日が暮れるぞ!」ラーンは不機嫌そうに言ったが、イシェの真剣な顔色を見て少しだけ様子を見た。石碑には奇妙な紋様が刻まれており、まるで生き物のように蠢いているように見えた。「確かに…なんか気持ち悪いな」
「あのね…」テルヘルが口を開いた。「この紋様は、私がかつてヴォルダンで見たものと似ているわ。そこの地下遺跡の記録に、複写魔術に関する記述があったのよ」
ラーンの顔色が変わった。「複写魔術って…つまり、あの石碑から何かが…?」
「そうよ。そして、その力は危険なものかもしれない」テルヘルは剣を手に取り、警戒した様子を見せた。イシェも daggers を抜き、ラーンは深く息を吸い、剣を構えた。石碑の紋様は、まるで生きているかのように光り輝き始めた。
「何かが起こるぞ!」ラーンの叫びが響く中、石碑から怪しい光が放たれ、三人は目を細めた。その光は空中に広がり、やがて幾つもの影を形作っていった。影は次第に実体となり、剣を構えた兵士の姿になった。
「ヴォルダンの兵か!?」ラーンが叫んだ。
「いいえ…」テルヘルは冷静に言った。「これは複写魔術による幻影だ。本物ではない」
しかし、その幻影兵士たちは容赦なく襲いかかってきた。ラーンとイシェは剣を振り回し、テルヘルは魔法を使いこなして応戦する。激しい戦いが繰り広げられる中、イシェは石碑の紋様をじっと見つめていた。そして彼女は、あることに気づいた。
「あの紋様…複写されているのは兵士の姿だけじゃない」イシェが叫んだ。「あの石碑は、この遺跡そのものを複写する力を持っている!」
彼女の言葉にラーンとテルヘルが驚愕した。石碑から放たれた光は、遺跡全体を包み込み、地面が揺れ始めた。遺跡の構造は変化し、新たな通路が出現し、壁が崩れ落ちた。そして、その中心には、巨大な宝箱が現れた。
「大穴だ!」ラーンの目が輝いた。しかし、同時に、この場所がヴォルダンに知られてしまう危険性も高まったことを彼は理解していた。
イシェは冷静さを保ちながら言った。「今、この遺跡を脱出するのが最優先だ。宝箱は後で…」
三人は協力して幻影兵士をかわし、崩れゆく遺跡から脱出した。だが、彼らの背後には、石碑から放たれた光が、ヴォルダンへと続く道を開き始めた…。