ビレーの陽光が容赦なく照りつける中、ラーンが石ころを蹴飛ばしながらイシェの後ろを歩いていた。
「おい、イシェ。今日の遺跡はどれくらい稼げるか予想できるか?」
イシェは肩に荷物を背負いながら、地図を広げていた。「そんなことより、あの遺跡の規模を見れば分かるだろう。大した財宝があるとは思えない。それにテルヘルが提示した報酬も、以前と同じだ」
ラーンの顔色が曇った。「そうだな…」
テルヘルの依頼はいつも高額だが、その分危険度も高い。今回はヴォルダンとの国境に近い遺跡で、かつての戦場跡として知られていた。
「あの遺跡には何かあるって、テルヘルが言ってたよな?」
イシェは地図をしまいながら言った。「何か特別な遺物らしい。彼女はそれを手に入れるために、あらゆる手段を使うだろう」
ラーンは深くため息をついた。「テルヘルの目的はいつも謎だらけだ」
彼らはビレーから少し離れた場所にある小さな廃墟へ向かった。かつては城塞があった場所だが、今は崩れかけた壁と雑草が生い茂るのみだった。
「ここが遺跡の入口か?」
イシェが入り口を示す。ラーンは剣を構えながら、慎重に中へ足を踏み入れた。
薄暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な模様が刻まれていた。ラーンの視線は、壁の一部の隙間から覗く光に惹かれた。
「イシェ、見てくれ」
ラーンが指差す方向をイシェも覗き込む。そこには、まるで機械のような複雑な装置が置かれていた。その周りには、金属片が散らばっている。
「これは…」
イシェは目を丸くした。「製作物…?」
その時、背後から冷たい声が響いた。「見つけたようだな」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の後ろには、何人かの武装した兵士がついている。
「テルヘル!いつからここにいたんだ?」
ラーンは剣を抜き、警戒した。
テルヘルはニヤリと笑った。「お前たちはただの道具だ。この遺跡の真価は、お前たちが知る必要はない」
彼女は兵士に合図を送る。兵士たちがラーンとイシェを囲み始めた。
「待て!何をするんだ!」
ラーンの叫びは無視され、兵士たちは彼らを攻撃してきた。ラーンは剣を振りかざして抵抗したが、人数で劣勢だった。イシェは素早い動きで兵士の攻撃をかわしながら、隙を見てテルヘルに近づく。
「テルヘル!なぜこんなことをするんだ!」
イシェの声が響いた。テルヘルは一瞬、表情を変えたがすぐに元に戻った。
「お前たちは邪魔だ。この遺跡は私のものだ」
テルヘルは手を上げると、兵士たちはラーンとイシェを捕らえて拘束した。
ラーンの視線は、光る装置へと向けられた。それはまるで、彼の未来を照らすかのような光を放っていた。
「製作…一体何のために…」
ラーンの心には、不安と疑問が渦巻いていた。