ラーンの足が石畳の上で乾いた音を立てる。ビレーの朝はいつも早いが、今日は特に早く起きなければならなかった。遺跡探索の依頼を受けたのだ。イシェはいつものように眉間にしわを寄せて地図を広げている。
「今回はあの『古代王の墓』らしいね。危険度が高いって噂だよ」
イシェの声にラーンは軽く頷く。「危険だって？ それこそ面白いじゃないか！」
彼はいつもそうだった。危険なほど興奮するタイプだ。イシェはため息をついた。
テルヘルは冷静に地図を指さす。「遺跡の入り口は南西にある洞窟だ。内部は複雑な構造になっているようだが、目標となる遺物は中央部にあると推測される」
テルヘルの目は鋭く、その言葉には揺るぎない自信が込められていた。ラーンは彼女の言葉に耳を傾ける一方で、イシェの足元には小さな石ころが落ちていた。イシェがそれを拾い上げると、そこにはわずかな光沢があった。
「これは…？」
イシェは眉をひそめる。小さな石ころはまるで宝石のように輝いていた。
「もしかして、遺跡から持ち出されたもの？」
イシェの言葉にラーンの顔色が変わった。彼はすぐに立ち上がり、テルヘルに問いかける。
「テルヘル、この石は何だ？」
テルヘルは一瞬目を伏せた後、ゆっくりと答えた。
「それは… 以前、ヴォルダンで手に入れたものだ」
彼女の目はどこか遠くを見つめていた。ラーンはイシェの顔色を気にしながら、テルヘルの言葉を聞いた。
「ヴォルダン…」
イシェは小さく呟いた。その言葉には、彼らが立ち向かうべき巨大な影が潜んでいることを示すような重みがあった。そして、彼らは裸足で、その影へと歩み始めたのだ。