ラーンが遺跡の奥深くまで足を踏み入れたとき、石畳が崩れ始めた。イシェが鋭い声で警告を発したものの、ラーンはすでに足を取られてバランスを崩していた。彼は慌てて剣で支えようとしたが、その瞬間、天井から岩盤が落下し、彼の視界を遮った。
「ラーン！」イシェの声がかすかに聞こえた。だが、ラーンの意識はすでに朦朧としていた。激しい痛みと、耳をつんざくような金属音だけが彼を苦しめ続けた。
気がつくと、ラーンはイシェに助け起こされ、遺跡の外に出されていた。彼は全身の筋肉痛と激痛に襲われたが、意識はしっかりしていた。
「大丈夫か？」イシェの声が心配そうに聞こえた。「あの落下…かなり危険だったぞ」。
ラーンの視界はぼやけていたが、イシェの顔色を見て状況を理解した。彼の左腕には深い傷があり、血が止まらない。
「……大丈夫だ。少し休めば」
しかし、イシェはそんなラーンの言葉を無視し、すぐに近くの村へと走り出した。
ラーンは一人で遺跡の外で待たされ、冷たく刺すような風が吹き荒れた。彼は自分の無謀さを恥じ、イシェに迷惑をかけていることを悟った。そして、同時に、イシェが彼をどれほど案じているのかを痛感した。
しばらくして、イシェは村の医者と共に戻ってきた。医者はラーンの傷を診ると、深くため息をついた。「運がいいな。致命傷にはなっていないようだ」。彼は丁寧に傷口を洗浄し、薬草を塗布した。
「これでしばらくは安静にしておく必要があるだろう。無理はするな」
イシェは医者の言葉を真剣な表情で聞きながら、ラーンの腕を支えていた。彼の目には、ラーンへの心配と、どこか諦めのようなものが宿っていた。
ラーンはイシェの視線を感じると、申し訳なさそうに言った。「ごめん…」
「いいんだよ。今回は本当に危なかった…もうそんな無茶なことはしないでくれ」
イシェの言葉に、ラーンは深く頷いた。彼は自分の無謀さを反省し、イシェへの感謝を胸に刻んだ。そして、いつか自分自身で補修する覚悟を決めたのだ。