ラーンの大雑把な剣振りが埃を巻き上げ、崩れた石柱の影からイシェが飛び出した。彼女は息を切らしながら、手に持った小さな水晶球を見つめた。「見つけた!古代言語で書かれた碑文だ!」
「やったな!これでまた一泡吹かせられるぞ!」ラーンは拳を握りしめて喜んだ。テルヘルは冷静に碑文の写真を撮影し、「場所と内容を記録しておく」と淡々と呟いた。彼らは最近、ヴォルダンとの国境近くの遺跡で大きな発見をしたのだ。
「この碑文には、ヴォルダンの支配下にある古代都市の場所が記されている可能性が高い」テルヘルは地図を広げ、指を走らせた。「そこには、ヴォルダンが隠していると言われている『禁断の知識』があるかもしれない」
ラーンは目を輝かせた。「もしそれが本当なら、大穴だ!我々の夢が叶うぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せた。「でも、ヴォルダンがそんな貴重なものを簡単に手に入れられるわけないだろう。罠の可能性もある」
「罠なら叩き潰せばいいんだ!」ラーンは剣を構え、意気揚々とした。テルヘルは彼を見据え、何かを企んでいるかのような冷たい笑みを浮かべた。
数日後、彼らはヴォルダン軍の警備が厳重な古代都市にたどり着いた。テルヘルは事前に情報を集め、巧みな策略で警備隊を欺き、一行は都市内部へ侵入することに成功した。しかし、都市の中心には巨大な祭壇があり、そこにはヴォルダンの紋章が刻まれた黒曜石の箱が置かれていた。
「ここだ!」ラーンは箱に駆け寄ろうとした瞬間、背後から激しい痛みが走った。振り返ると、イシェが剣を突き立てていた。「ごめんなさい、ラーン。テルヘル様のお申し付けです」
ラーンの顔色が青ざめた。「イシェ…お前が裏切ったのか!?」
イシェは冷酷な表情で言った。「私は最初からヴォルダンに仕えています。テルヘル様は私の才能を見抜き、私をスパイとして育ててくれました。あなたはただの駒だったんです」
ラーンは絶望し、立ち尽くしていた。その時、テルヘルが近づき、箱を開けようとした瞬間、巨大な石壁が都市全体を覆い隠した。
「何だこれは!?」テルヘルは驚愕する。壁の中からヴォルダンの声が響き渡った。「ようこそ、私の罠に。お前たちは私の計画の一部だったのだ」
イシェは冷静に言った。「テルヘル様、計画通りです。彼らをここで始末し、禁断の知識を手に入れましょう」
ラーンは絶望の中で、裏切りと欺瞞の渦の中に飲み込まれていくのを感じた。彼は自分の無謀さと、仲間への信頼を深く後悔した。