「よし、今回はあの崩れた塔だ!」ラーンが目を輝かせ、古い地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せながら、地図の記号を指差した。「また危険な場所か? ラーン、あの塔は地元の人間ですら近づかないぞ」
「そんなこと言わずに、冒険だと思えよ!」ラーンは剣を手に取り、興奮気味に言った。イシェはため息をつきながらも、自分の装備を整えた。革製の軽装と短剣、そして腰には小さな薬瓶がぶら下がっている。いつも通り、慎重に準備をする。
そこに、テルヘルが静かに姿を現した。彼女は黒曜石の鎧を身にまとい、鋭い眼光で地図を見下ろす。その姿はまるで戦いの女神のようだった。「準備はいいか?」彼女の言葉は力強く響き渡った。ラーンとイシェは互いに頷き合った。
崩れた塔に続く道は険しく、足元は不安定だった。ラーンは先頭を歩き、石を蹴り飛ばしながら進む。イシェは彼の後ろを少し遅れて進み、周囲の状況を警戒する。テルヘルは二人から少し離れた位置を歩きながら、常に周囲を見回していた。彼女の鋭い視線は、どんな小さな変化にも敏感に反応する。
塔内部に入ると、冷たい風が吹き荒れ、埃が舞い上がった。薄暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な文字が刻まれていた。イシェは懐中電灯の光を当てながら、文字を注意深く観察した。「これは…古代語だ。危険を警告しているようだ」
ラーンは不自然に緊張した様子を見せた。「そんなこと気にせず、先に進もうぜ!」彼は剣を手に取り、再び歩き出した。イシェは不安な気持ちを抱えながらも、彼に続く。テルヘルは沈黙を守りながら、後方から二人を見守った。彼女の目は、まるで predatory animals のように鋭く光っていた。
やがて、彼らは塔の最上階にたどり着いた。そこには巨大な祭壇があり、その上に何かが置かれていた。ラーンが祭壇に近づこうとした瞬間、床が崩れ落ち、深い穴が開いた。ラーンはバランスを崩し、穴の中に転落していく。
「ラーン!」イシェが叫びながら、穴をのぞき込んだ。しかし、ラーンの姿は見えない。「大丈夫か!? 」
テルヘルは冷静に状況を判断し、イシェに言った。「急いで助けろ。私は彼の装備を取り戻す」彼女は鋭い目で穴の奥深くを見つめた。そこには、何かが光り輝いていた。それは、ラーンが落とした剣だった。
イシェは不安な気持ちを抱えながらも、穴に降りていくことを決意した。テルヘルの言葉が彼女の心を奮い立たせたのだ。「大丈夫だ。私はラーンの装備を必ず取り戻す」彼女はそう呟きながら、深い闇へと消えていった。