ラーンの豪快な笑い声がビレーの街角にこだました。イシェは眉間にしわを寄せていた。
「また無駄遣いをしたんだろ?」
「いやいや、今回は違うんだ!ほら見てみろ、これ!」
ラーンはイシェに見せるため、テーブルの上に小袋をドスンと置いた。中からキラキラと輝く宝石がこぼれ落ちた。イシェはため息をつきながら、宝石を一つ手に取った。
「綺麗だな…でも、これだけで一体何ができるんだい?」
「なになに、この質なら十分高値で売れるぞ!これでまたしばらく酒と肉が楽しめるぜ!」
ラーンの笑顔は自信に満ちていた。だがイシェは彼の表情に隠された不安を感じ取っていた。最近、遺跡探しの成果は芳しくなく、ラーンの無計画な行動も影響していたのだ。
「あの遺跡の地図…まだ持ってるよな?」
イシェが尋ねると、ラーンは一瞬だけ顔色を変えた。
「ああ、もちろん。あの遺跡には必ず何かあると信じてるんだ!」
ラーンの目は輝いていたが、イシェは彼の瞳に映る虚しさを見逃さなかった。
その夜、ビレーの街角で、一人の女がラーンたちをじっと見つめていた。黒曜石のような瞳に、冷酷な光が宿っていた。彼女はテルヘルだった。ヴォルダンからの復讐を果たすため、彼女はラーンたちを利用しようとしていた。
「彼らは、まさに私が求めている駒だ…」
テルヘルの唇からは冷たい声が漏れた。彼女の目には、燃えるような炎が宿っていた。