「よし、行こうぜ!」
ラーンの豪快な声は、ビレーの朝の静けさを一撃で打ち破った。イシェはため息をつきながら、彼の後を追いかけるようにして遺跡の入り口へと向かった。テルヘルが用意した地図を手に、彼女は慎重に周囲を警戒しながら進む。
「今日は一体何を探しに来たんだっけ?」
「なんだって、遺跡だぞ!そんなこと言ってる場合じゃないだろ」
ラーンの言葉はいつもの調子だが、イシェは彼の様子を見て何かを感じ取っていた。いつもより興奮しているように見えたのだ。
「何かあったのかい?」
「いや、特にないよ。ただ今日はいい予感がするんだ!」
ラーンはそう言うと、先へ進んでいった。イシェとテルヘルが互いに顔を見合わせた。
遺跡内部は薄暗く、湿った空気が漂っていた。足元には石畳が敷かれており、時折、崩れかかった壁から風が吹き抜ける。彼らは慎重に、一歩ずつ進んでいった。
「ここら辺り、何かあった気がするんだ」
ラーンは突然立ち止まり、地面を指さした。イシェもテルヘルも彼の指さす方向を見つめたが、特に変わった様子は見えない。
「何が見えるんだ?」
イシェの問いかけに、ラーンはニヤリと笑った。
「見えないけど、感じるんだよ。何かがここに眠ってるって」
テルヘルは眉間に皺を寄せた。彼女はラーンの感性を信じているわけではない。しかし、彼の興奮ぶりを見る限り、何かを見つけたのだろうか?
「よし、ここだ!」
ラーンは石畳の隙間を見つけると、力強く引き上げた。すると、そこから小さな箱が出てきた。イシェとテルヘルが駆け寄り、箱の中身を確かめた。中には、金貨ではなく、一枚の古い地図が入っていた。
「これは…」
イシェは地図を広げ、その内容を確かめた。そこには、ビレーから遠く離れた場所にある、未知の遺跡が記されていた。
「これは一体…」
ラーンは目を輝かせながら地図を見つめていた。イシェとテルヘルは彼の様子を見て、何か大きな変化を感じた。ラーンの目は、今まで見たことのない強い意志で輝いていたのだ。
「これだ!これが俺の大穴だ!」
ラーンの言葉に、イシェとテルヘルは互いに顔を見合わせた。彼らがこれから辿る道は、決して平坦なものではないだろう。しかし、ラーンの決意は揺るぎないものだった。