ラーンが石を蹴飛ばすと、イシェの眉間にしわが寄った。「また遺跡探すのか？」とため息をつきながら、彼女は道具を整理し始めた。ラーンの無計画さにいつも呆れていたが、彼の豪快さはどこか魅力的でもあった。
「今日は必ず大穴見つけるぞ！」ラーンは目を輝かせ、剣を研ぎ始めた。イシェはそんな彼を見つめ、「大穴」という言葉にわずかな苦みを感じた。それは単なる言い訳ではない、ラーンの心の奥底にある希望だった。
そこにテルヘルが足音を立てて現れた。「準備はいいか？」彼女の鋭い視線は、まるで二人を透かそうとするかのようだった。表向きは遺跡探索の依頼人だが、イシェは彼女に何か別の目的があると感じていた。ヴォルダンへの復讐という目標を掲げるテルヘルにとって、遺跡は手段の一つに過ぎないのかもしれない。
ビレーを出発した三人は、山道を進んだ。ラーンの軽快な足取りとは対照的に、イシェは常に周囲を警戒していた。テルヘルの目的は何なのか？そして、この遺跡探索の先に何が待ち受けているのか？不安と好奇心がイシェを駆り立てる。
遺跡の入り口には、奇妙な模様が刻まれた石碑があった。「何か警告みたいだな」ラーンが呟くと、テルヘルは真剣な表情で石碑を眺めた。「これはヴォルダンが封印した古代技術に関するものだ」彼女は静かに言った。「我々が探しているものは、その技術を解き放つ鍵である」
イシェは息をのんだ。表向きは遺跡探索だが、実際にはヴォルダンの秘密に迫る危険な任務だった。ラーンは相変わらず無邪気に大穴を夢見ているが、イシェは自分が巻き込まれたこの渦の深さに恐怖を感じ始めた。